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菅政権1カ月 「強権政治」では危うい

2020/10/16

 菅義偉内閣が発足して、きょうで1カ月となった。

 菅首相は、携帯電話料金の値下げや不妊治療への保険適用などトップダウンで矢継ぎ早に閣僚らに指示を出し、スピード重視で看板政策を推し進めようとする姿勢を際立たせている。

 国民に分かりやすい身近な政策課題に的を絞って、短期間で目に見える改革成果を積み上げようとしているのだろう。

 報道各社の世論調査では、発足時の内閣支持率は軒並み60%を超えた。無派閥で党内に強固な基盤のない首相にとって頼みの綱は世論の支持だろう。それをつなぎ留めておきたい思惑があり、その先に解散総選挙をにらんでいるのかもしれない。

 順調に見えた新政権の滑り出しに影を落とし、憂慮される事態も起きている。日本学術会議が推薦した会員候補105人のうち6人が首相に任命されなかった問題である。

 安全保障関連法や米軍基地問題などに関して政府方針に異を唱えた学者を排除したように見える。誰がどんな権限で拒否をしたのか、日を追うごとに経緯の不透明さが浮き彫りになる。

 憲法が保障する「学問の自由」を侵害する懸念さえある。首相はしかし、内閣記者会のインタビューで「学問の自由とは全く関係ない。どう考えてもそうでない」と木で鼻をくくったような受け答えをする。

 安倍政権下の官房長官時代をほうふつとさせる。都合の悪いことは質問させない。質問されても答えないし、はぐらかす。なぜ関係ないのか、どう考えたのか。十分な説明がなければ、国民は納得するまい。

 自民党総裁選で、首相は「政策に反対する官僚には異動してもらう」と言い放った。政権の意に沿えば重用し、盾突けば冷や飯を食わせる―。安倍政権下で問題視された強権的な手法は極めて危うい。

 安倍政治の継承を掲げる首相だが、一方で「既得権益、あしき前例主義の打破」という改革の断行も唱える。「脱はんこ」や「行政改革目安箱」といった政策の看板は目を引くものの、どんな仕事に取り組むのか、政権の理念が見えてこない。

 就任後の所信表明演説も先送りしたままである。今月下旬に臨時国会が開かれる予定だが、首相指名から1カ月以上も実施されないのは異例である。新たなリーダーとして、どんな国や社会を目指すのか明確に示すことが求められる。

 首相は総裁選で、日本の首相は諸外国に比べて国会に拘束される時間が長いとして「出席は大事なところに限定すべきだ」とも述べている。国会軽視とも受け止められかねない。国会論戦から逃げ回った安倍政治を繰り返してはなるまい。

 コロナ禍への対応では、経済重視の姿勢が鮮明になっている。「Go To」事業の拡大と合わせ、入国制限を緩和し、海外とのビジネス往来も抜本的に見直す。来夏の東京五輪開催に向けた地ならしの意味合いもあるのだろう。

 経済を回す政策の必要性は理解できるが、「見切り発車」を不安視する声は根強い。感染の再拡大を招かないよう細心の注意が欠かせない。感染リスクと経済効果について科学的なデータを示し、国民の理解と納得を得るのは政権の責務だ。 

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