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【こちら編集局です】「長男が進学する学校は温かくない」 広島市立中給食、地域間で格差なお

2020/10/18
デリバリー給食と弁当持参の選択制の牛田中(広島市東区)。半数ほどがデリバリー給食を選んでいるという

デリバリー給食と弁当持参の選択制の牛田中(広島市東区)。半数ほどがデリバリー給食を選んでいるという

 「来春、長男が進学する広島市西区の市立中学校には温かい給食がない。別の区ではあるのに納得できません」。30代会社員女性から編集局にこんな声が寄せられた。調べると、確かに同じ市内なのに、市立中では温かい給食が提供される地域とされない地域があった。市教委は「給食格差」の是正を検討しているが、具体的な動きは見えない。

 市立中全64校の給食の現状を調べてみた。自校や周辺の給食センターなどで調理し、温かい給食を提供しているのは佐伯区全域と南区、安佐南区、安佐北区、安芸区の一部の計21校。一方、中区、東区、西区の全域を含む残りの計43校は、民間業者が作った弁当を提供するデリバリー方式の給食を取り入れ、弁当持参との選択制だ。

 なぜ同じ市内で対応がばらついているのか。最大の要因は自治体合併にあった。

 温かい給食を出している学校は主に旧合併町にある。全域で提供されている佐伯区は1985年3月、旧五日市町が合併して誕生。2005年4月に旧湯来町が合併して区域に加わった。市教委によると、給食を提供してきた合併前の体制を引き継いだり、合併建設計画に盛り込んで合併後に始めたりしたケースがあるという。

 一方、旧市内の学校は施設用地や費用の問題などから給食を提供していなかった。働く親の増加などを背景に給食を求める声が広がり、市教委は1994年度から段階的にデリバリー給食を導入した。

 声を寄せた女性はシングルマザー。正社員として働きながら小学3年と6年の子ども2人を育てている。女性が住む西区ではデリバリー給食か弁当持参の選択制だ。「栄養バランスが取れたボリュームのある弁当を作ってやりたいが、仕事も育児も家事も全て一人でこなす中ではしんどい」

 デリバリー給食も栄養士が作成した献立や手順に基づいて作られている。それを注文すればいいのではと思うが、実は申し込みが少ない。市内全体の申込率は年々減っており、2019年度は過去最低の31・8%。食中毒を防ぐため、おかずの温度を20度以下に保つ必要があり、子どもに不人気だという。

 学校給食法は08年の大幅改正で、学校での食育推進を掲げた。市教委が18年度、現在の給食が食育の役割を果たせているかを教員に尋ねたところ、デリバリー給食の学校では「果たせている」との回答が37・7%。自校調理校(94・3%)、給食センター方式の学校(78・3%)を大きく下回った。教員にもデリバリー給食の改善を求める声は根強い。

 市教委は19年6月、デリバリー給食を見直し、温かいまま提供できる給食センターや自校調理に変更する方向で検討を始めると明らかにした。ただ変更時期は未定という。「安全に長期的に給食を提供するには、多角的にメリット、デメリットを見て、体制を慎重に検討する必要がある」と説明する。

 日本の子どもの貧困は7人に1人の割合とされ、給食は「子どもの命のセーフティーネット」としての役割も強まっている。市教委は保護者の負担軽減だけでなく、食育や子どもの貧困という観点からも対応を急ぐべきだろう。(小林可奈)

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