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決別 金権政治

広島県議会、根深い「カネ」 奥原元議長、再び渦中 【決別 金権政治】<第2部・被買収者>(1)

2020/10/24 23:35
広島県議会の定例会本会議に出席した奥原(右端)。政治家として最多の200万円を受け取り、違法性も認めている(6日)

広島県議会の定例会本会議に出席した奥原(右端)。政治家として最多の200万円を受け取り、違法性も認めている(6日)

 2019年7月の参院選広島選挙区を巡る大規模買収事件が、広島県政界を揺るがしている。公選法違反罪に問われた元法相の河井克行(57)=衆院広島3区=と妻案里(47)=参院広島=は100人に計2901万円を配ったとされ、そのうち40人を県内の政治家が占める。証人として法廷に立ち、違法な現金の受け取りを認める一方で、有権者への説明はなおざりの議員も多い。なぜカネを受け取ったのか。けじめをどう考えているのか。「被買収者」に迫る。

 県議会で最多の当選12回を数える元議長、奥原信也(78)=呉市。昨秋に案里陣営の選挙違反疑惑が浮上して以来、中国新聞の取材に現金の授受を否定し続けたが、今年6月下旬、一転して200万円を受け取ったと認めた。

 当時、克行と案里が逮捕され、被買収者とされる首長や地方議員が次々に報道される中、奥原もその流れに追随して認める形だった。200万円は、現金を受領したとされる40人の政治家の中で最高額。「自分が起訴されれば、辞職しようと思う」。奥原は苦しそうに胸の内も明かした。

 ▽県議辞職を否定

 先行して進む案里の公判では証言を求められ、被買収者100人の先頭を切って9月16日に東京地裁へ出廷。受け取った200万円の違法性を認め、交際費に使ったと説明した。「大変な罪を犯した」と、殊勝に頭を下げる場面もあった。

 ところが今、奥原の表情に6月下旬の暗さはない。検察当局が被買収者の刑事処分をしていない中、複数の関係者によると、奥原は周囲に「検察が処分しない以上は辞める必要はない」と言ったという。

 いったん辞退する意向を申し出た自民党県連の顧問のポストも今月上旬の決定前に「引き受けたい」と翻意。最終的に顧問の職が廃止されたため無役となったが、同僚県議らは口々に「明らかに元気を取り戻している」と語る。県庁の議会棟の個室から一度は持ち出した荷物を元に戻した。

 ただ、有権者の目は厳しい。無投票の11年を除く過去11回の県議選をトップ当選で送り出した地元・呉市からも「真っ先に責任を取って辞職すべきだ」(50代男性)との声が聞かれる。

 奥原はかつても疑惑の渦中にあった。09年まで4期務めた前知事の故藤田雄山の知事選で、陣営が当時の県議らに「対策費」を配ったとされる買収疑惑だ。対策費の提供先として元秘書のメモに記載されていた現職県議10人の名前が07年に明らかになり、奥原も含まれていた。奥原は対策費の受け取りを全面否定した。

 ▽条例、名ばかりに

 疑惑は解明に至らず幕引きされた一方で、県議会は07年、議員の行動規範として「公正を疑われるような金品の授受」などを禁じる政治倫理条例を全会一致で制定した。罰則規定はないが、政治倫理について批判を受けた時には「真摯(しんし)かつ誠実に事実を解明し、責任を進んで明らかにしなければならない」と明記。条例違反の疑いがある場合に、実態を調べる審査会を設置できるとも定める。

 64人が在籍する県議会では、13人が河井夫妻から現金を受領したとされる。13人のうち、奥原をはじめ07年に現職だった8人は県議会の一員として条例の制定に賛成した。

 しかし今回の大規模買収事件が発覚して以降、13人が法廷以外の場で説明責任を果たそうとする姿勢は乏しい。県議会として審査会設置の動きもない。

 「議員は条例の精神を忘れたのか。有権者の負託を受けた以上、法廷以外の場でも自ら事実をつまびらかにし、その声に耳を傾ける責任がある」。条例制定を議会改革推進委員長としてリードした元県議の弁護士、間所了(さとし)は古巣に批判の目を向ける。(敬称・呼称略)

 <クリック>前広島県知事の知事選を巡る買収疑惑 前知事、故藤田雄山の後援会不正事件の公判で広島地検が2006年、過去の知事選で藤田陣営が県議らに対策費を渡していたと指摘。後に開示された裁判記録で、藤田が初当選した1993年の知事選の対策費が2億〜3億円に上ったと元秘書が供述し、2期目の97年の知事選では県議らに対策費を渡した元秘書のメモがあることが判明した。07年にはメモに記載されていた現職県議10人の実名が分かったが、いずれも対策費の受領を否定。疑惑は解明されることなく幕引きされた。

【決別 金権政治】
<第2部 被買収者>
(1)広島県議会、根深い「カネ」 奥原元議長、再び渦中
(2)広島県議、違法知りつつ支援 50万円受領に支持者落胆
(3)唯一の代議士に町側苦慮 前議長「仕返し恐れた」
(4)顔役巻き込み地域に影 「もう活動の資格ない」
(5)大物逃し起訴見送りか 検察、処分の公平性考慮
(6)政治家続投、厳しい視線 専門家「有権者に説明を」

<第1部・巨額の買収事件>
(1)菅氏来援の直前「裏仕事」 克行氏、現金ばらまき
(2)1日で7人に現金 分裂選挙、にじむ焦り
(3)地盤なき地で躍起 「家内頼む」個室授受
(4)統一選でばらまき 「陣中見舞い」「当選祝い」
(5)領収書なき「裏金」 選挙区内は以前から
(6)現金、初当選からか 過去に落選「強い恐怖」
(7)公設秘書2人が加担 「好きなん買いんさい」
(8)案里被告、追及する立場逆転 説明責任を自身も回避

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  •  2019年夏の参院選で河井克行、案里夫妻が100人に計2901万円を配ったとされる買収事件では、選挙に絡んだお金のやり取りが浮き彫りとなりました。令和の時代も変わらない「金権選挙」。皆さんの地域でも耳にしたこと、目にしたことはありませんか。体験、情報、意見をぜひお寄せください。(中国新聞「決別 金権政治」取材班)

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