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コロナ不正受給 制度の悪用、許されない

2020/10/25

 新型コロナウイルスの影響で苦境に陥った個人事業主らを支援する「持続化給付金」の不正受給が全国で相次いでいる。

 不正の横行を許せば、本当に困っている人を救済する制度の目的や信頼性を損ねてしまう。政府や捜査機関は監視を強めるとともに、不正の実態を洗い出し、厳しく対処すべきだ。

 持続化給付金は、新型コロナの影響で収入が5割以上減った個人事業者に最大100万円、中小企業に最大200万円が支払われる。5月から受け付けが始まり、今月19日時点で約360万件、約4兆7千億円が支給された。

 政府は速やかに救済を進めるため、手続きを大幅に簡素化した。税金の確定申告の控えなどを添えてオンラインで申請すれば、厳密な審査を経ずに認められる仕組みになっている。

 経済産業省によると、全体の7割近くは申請から14日以内で支給されている。一刻も早く支援を届ける仕組みが逆手に取られた格好だ。制度の隙につけ込んで不正に利益を得たとすれば、許し難い行為である。

 広島県警は今月、この給付金をだまし取ったとして、無職や会社役員の男ら5人を詐欺容疑で逮捕した。

 5人はバイトなどと持ちかけて県内の大学生らを勧誘し、虚偽申請を代行したり不正な手口を指示したりして、給付金を搾取し山分けしていた。不正受給の総額は1千万円を超えるとみられ、組織的に搾取を繰り返していた可能性が強い。

 虚偽に申請した大学生らは給付金の一部を報酬として得ていたとされる。こうした報酬目当ての若者らを犯行グループが口コミや会員制交流サイト(SNS)で集め、給付金を搾取する事例は全国各地で次々と発覚している。

 軽い気持ちで不正に加担した若者も少なくないのだろう。全国の消費生活センターや警察には「不正に受給してしまったかもしれない」「給付金を返したい」といった相談や問い合わせが殺到している。

 経産省は、不正受給をしていたことを自主的に申し出た場合、2割の加算金などのペナルティーを免除する方針を示している。ただ甘い話に安易に飛びついた軽はずみな行動は責められても仕方あるまい。当然ながら刑事罰を問われることもあると肝に銘じるべきだ。

 経産省は、一部の審査を慎重に行うなど対策を講じているが、「14日以内」の給付は堅持する方針でいる。

 迅速な支援は当然ながら、現状の審査体制に甘い点がなかったかどうか点検し、見直すべきだ。審査の担当者が確認の電話を入れるなどしていれば、不正を見抜けた可能性がある。

 給付手続き業務が民間に外部委託されている点も気掛かりだ。経産省は当初、一般社団法人サービスデザイン推進協議会に業務を委託した。協議会はその大部分を広告大手の電通に再委託し、業務はさらに多くの下請け業者に回されている。

 民間委託自体に問題があるわけではないが、経産省のチェック体制が十分だったかどうかも検証しなければならない。

 巨額な税金を使う事業である。給付後の調査をより徹底し、不正の排除に全力を挙げる必要がある。 

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