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いじめ認知件数が最多 子どもの味方、増やそう

2020/10/28 5:53

 全国の小中高校と特別支援学校で2019年度に認知されたいじめは、61万2496件だった。前年度を7万件近く上回り5年続けて最多を更新した。相変わらず深刻だと言えよう。

 にもかかわらず、調査した文部科学省は楽観的だ。「教員が積極的に発見し、早期に介入する方針が定着した」。つまりいじめ自体が増えたわけではなく、見逃されていた被害を直視できるようになったというのだ。認識が甘すぎるのではないか。これでは、学校現場や教育委員会の意識改革は進むまい。

 被害者の訴えから目を背ける学校は少なくない。そんな指摘も専門家から漏れる。認知された件数はまだ「氷山の一角」にすぎないというわけだ。

 コロナ禍の影響で今後さらに増える恐れも否定できない。深刻な事態に陥らないよう、子どもの味方を増やし、SOSに敏感に反応して支援の手を差し伸べていかなければならない。

 いじめの具体的な内容(複数回答)は「冷やかしや悪口」が最も多く、6割を超えた。インターネットや会員制交流サイト(SNS)での誹謗(ひぼう)中傷は、全体では2・9%だが、高校では18・7%で2番目に多かった。ネット上でのいじめは見えにくい面もあり、対応が急がれる。

 小学校での急増が際立つ。全体の増加分の9割近くを占める。特に1〜3年生はいずれも1万件以上増えた。子どもの数は減っているのに、なぜ増えるのか。きめ細かく分析した上で対応することが必要だ。

 児童・生徒千人当たりの認知件数は46・5件だった。13年度は83倍あった都道府県別の格差は9倍近くまで縮んだ。「いじめ感度」の地域差が改善しつつある点に限っては評価できる。地域や学校、先生によって、SOSの把握に遅れが出ることは断じて避けなければならない。

 気になるのは、いじめ防止対策推進法で規定された「重大事態」の増加である。生命や心身に大きな被害を受けたのが301件あり、年30日以上の不登校となったのは517件だった。両方に該当する事例もあり、合計では前年度比2割増の723件で、過去最多となった。

 いじめを放置すれば、命にも関わることを改めて肝に銘じたい。兆候の段階で漏らさないように把握して、深刻になる前に歯止めをかける努力が求められる。教訓やノウハウを共有する仕組みも整えたい。

 17年には、広島市佐伯区の市立五日市観音中3年の女子生徒が遺書のような手紙を残して自ら命を絶った。遺族は今年、いじめを巡る学校の不適切な対応が自死につながったなどとして損害賠償を市に求めて提訴した。こうした悲劇を二度と繰り返してはならない。救えなかった命の重みを、市教委も全ての学校も再認識する必要がある。

 いじめが起きること自体を防ぐのは正直難しかろう。それだけに子どもの声に素早く対応し、独りぼっちにさせない―。そんな態勢づくりが急務だ。

 担任だけに任せたりSOSを軽んじたりしないよう、チームや学校全体で取り組むべきである。教育現場の問題に法的な観点から助言する「スクールロイヤー」や、スクールカウンセラーといった専門家の助言や協力を得ながら、地域住民や自治体も積極的に関わっていきたい。 

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