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中国山地に育まれた美

2020/10/28 5:53

 天高く、中国山地の美しさに目をひかれる季節である。紅葉はもちろん山や川で採れる豊かな恵み、収穫を終えた田の稲はで、祭り…。自然と人の営みの鮮やかなこと。そんな里山に抱かれ、育まれた人が生み出す美もある▲月光を背に手を差し伸べていたり、幼子を抱いていたり。奥田小由女(さゆめ)さんが作る女性像は慈愛や包容力をたたえている。柔和な人形作家自身のようであり、その人を育てた中国山地の「懐」のようなものも感じさせる▲三次市吉舎町に育つ。日本画家の夫、故奥田元宋(げんそう)さんも同郷で自然の美を描いた。古里が2人の作品の源泉である。小学校では寂しそうな疎開児童と接し、原爆で親類を亡くした。今、人形に平和の祈りも込める。夫と同じく文化勲章を贈られる▲樹木から引き出される美もある。針葉樹コウヤマキの「しゅーっと、きれいな立ち姿」を、東京スカイツリーに投影した。デザインを監修した彫刻家澄川喜一さんが語る。自生林が広がる島根県吉賀町の集落で育った▲木の声を聞いて材を組み合わせ、「そり」という美を表現する。同郷の服飾デザイナー森英恵さんに続いて文化勲章の受章者に。中国山地は「美の宝庫」に違いない。

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