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グーグル提訴 巨大ITの規制、議論を

2020/10/29

 「ググる(検索する)」という俗語でも知られる米グーグルが先ごろ、米司法省と11州から独占禁止法(反トラスト法)違反で提訴された。

 グーグルは世界の検索エンジン市場で占有率9割とされる。訴状によると、その独占的地位は、ネットによる検索ならびに広告の市場で反競争的な手段を用いて得たものだという。

 グーグルなど巨大IT企業は商取引や通信の市場で勢力を広げ、今や生活に欠かせないインフラを提供している。それだけに「総取り」ともなれば、市場の競争力が失われる。オンライン時代の公正な競争ルールは、どうあるべきか。議論を呼び起こす一石にしてほしい。

 独禁法違反で米司法省が巨大IT企業を相手取る訴訟は、1998年に米マイクロソフトを訴えて以来、約20年ぶりだ。

 今回、グーグルが同じ巨大ITの米アップルに年間80億〜120億ドル(約8400億〜約1兆2600億円)を渡し、グーグル検索をスマートフォンの標準仕様にするよう、取引していた実態も明るみに出た。

 独禁法違反との指摘に反論するグーグル側は、高い占有率も「消費者が選択した結果にすぎない」と主張する。それなら、膨大な金額のコストをかけてまで標準仕様を求める必要などあるまい。矛盾している。

 訴訟の準備は1年前から始まっていた。米議会や50州全ても調査を進めていたという。グーグル社に対する風当たりが、それほど強いのだろう。

 グーグルを巡っては、すでに欧州連合(EU)が17年以降、独禁法に当たるEU競争法違反で3件を認め、巨額の制裁金を命じてきた。だが、罰金どまりでは規制の効果は限られよう。マイクロソフトを訴追した際も、組織の手直し程度にとどまった経緯があるからだ。

 巨大IT企業は、新興企業の買収によって規模拡大と競争相手の排除を図り、市場支配を強めてきた。コロナ禍の巣ごもり需要で業績はさらに伸び、GAFAと呼ばれる4社の時価総額は9月時点で合計5兆ドル(約525兆円)に達する。

 さすがに目に余るのだろう。米下院の小委員会は4社の市場支配に警鐘を鳴らし、事業分離などの規制強化を提言した。

 司法省の側も現時点では、事業の分割や解体の可能性を否定していない。だが、今回の提訴を足掛かりにどこまで踏み込むのか、判然としない。

 政治的な思惑も透ける。大統領選で「法と秩序」を掲げる現職のトランプ氏が、点数稼ぎで急がせたのでは―。司法長官は最側近、提訴に加わった11州は共和党知事であることも、そんな見方に説得力を与えている。

 米国に先んじて、日本では今年5月、巨大IT企業の規制を強化する新法が成立した。だが、検索エンジンは既にグーグルのほぼ独り舞台といえる。優越的地位をいいことに、同意なしに個人情報を収集している恐れも否定できない。

 各国や地域では、膨大な利益に見合う税金をGAFAが納めていないとの反発も根強い。国際的なデジタル課税の導入が叫ばれるゆえんである。

 独占の排除とデジタル課税は巨大IT企業規制の「両輪」にほかならない。国際社会が足並みをそろえる必要がある。

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