【こちら編集局です】「観光PR役 女性多いのなぜ」広島県内 残る慣例、男性遠ざける 「おっさん」奮起の地域も
「観光大使」「観光アシスタント」と呼ばれるPR役に各地のイベントで出会ったことがある人も多いだろう。広島市の広島観光親善大使には今月、初めて男性が選ばれた。その一方、編集局にはこんな疑問が届いた。「でも、いまだに女性が多いのはなぜでしょう」。広島県内の現状を調べてみた。
サイドを短く刈り上げた「ツーブロック」の髪形にネクタイ姿。広島市内の大学に通う中上匠さん(21)は、本年度の広島観光親善大使だ。今月中旬、市役所であった大使の発表会で「サッカーで培った粘り強さを生かし、広島の魅力を発信したい」と語った。
広島観光コンベンションビューロー(中区)によると、1947年の開始以降、男性の就任は初めて。2001年に男性に門戸を開いてから、なかなか採用に至らなかった。理由の一つが「応募者に男性が少ないこと」という。中上さんを含む男性44人に対し、1100人を超える女性が「なりたい」と手を挙げてきた。確かに、数で「女性優位」だったのだろう。
観光PRはかつて「花を添える」役も期待され、多くの地域が女性に限った募集を続けていた。しかし、1999年に性別を制限した募集や採用を禁じる改正男女雇用機会均等法が施行。その後、男性を対象に入れる地域が増えた。
広島県観光連盟や加盟する観光協会などに尋ねると、公募する13のうち10のPR役が性別を問うていない。ただ、「レディ」「姫」「娘」といった女性に結び付く呼称はいまだに残っている。そうした名前も影響しているのか、男性で採用されたのは、広島の中上さんを含めて5人にとどまる。
今も対象を女性に限る地域もある。例えば、尾道市のミス尾道(旧ミス菊人形)の対象は、80年の初代から女性だけ。くれマリンクイーン(呉市)、よいとこ娘(庄原市)も同様だ。性別を限定する理由について、各地の担当者は「女性の呼称を使うことが浸透している」「雰囲気が華やぐ」「男性の場合、仕事との両立が難しい」と説明した。
PR役は女性の方が適しているのだろうか。就任した男性当人にも尋ねてみた。電話で取材を受けてくれたのは、昨年、初の「江田島さくらプリンス」の称号を射止めた筧本語(といもと・かたる)さん(41)。「まだ少数派ですからねえ。『何、この人?』みたいな目で見られることもありますよ」と打ち明ける。
例えば、スタッフに間違われたり、白いジャケットにちょうネクタイの姿から「マジシャン?」とひそひそ声が聞こえたり。「若い女性が就くというイメージが定着しているからでしょう。男性の応募が少ないのも、そのためかもしれませんね」と話す。
「でもアラフォーのおっさんの魅力もあります。僕がにこにこしているだけじゃねえ。笑いを呼ぶようなトークや歌で、地元の魅力を発信していきますよ」と張り切っていた。
プリンスはPR役の固定観念を覆すのかもしれない。県内のある観光協会の担当者も、取材を受けて「思い込みがあった」と話した。「これまでの慣例で、採用は女性しか考えていませんでした。でも、時代の流れは変わってきたし、名前も含めて検討してみます」(小林可奈、木原由維)
【関連記事】
あなたにおすすめの記事
こちら編集局です あなたの声からの最新記事
-
【こちら編集局です】広島県と広島市、公共施設の休・開館の判断は 運営の協議・調整なく (1/18)
▽休館→広島市、コロナ対策で独自基準/開館→県、市民生活への影響最小限に 新型コロナウイルス感染防止対策で、広島市内の図書館など市民に身近な公共施設の運営に関して広島県と市の対応が分かれている。市が...
-
【こちら編集局です】広島県、コロナ集中対策再延長 感染防止強化に理解 時短効果疑問視も (1/14)
広島県が14日、新型コロナウイルスの集中対策期間を2月7日まで再延長する方針を決めた。広島市で国の緊急事態宣言の対象地域に準じた対策を講じ、飲食店への営業時間短縮の要請エリア拡大など、従来より強化す...
-
【こちら編集局です】「安倍氏説明を」多数 政治へ不信感や怒り (12/22)
安倍晋三前首相の後援会が「桜を見る会」前日に主催した夕食会の費用補填(ほてん)問題で、安倍氏が東京地検特捜部から任意で事情聴取を受けた。編集局は22日、無料通信アプリLINE(ライン)でつながる読者...
-
【こちら編集局です】Go To停止「遅すぎ」 政府の対応、批判が大半 (12/15)
「中止は当たり前」「判断が遅すぎる」―。菅義偉首相が14日夜、表明した観光支援事業「Go To トラベル」の全国一時停止。表明後、編集局が無料通信アプリLINE(ライン)を通じて意見を募ると、約2時...
-
【こちら編集局です】「じわる」若者言葉、まじ「レベち」 SNS世代の新語、考察してみた (12/6)
▽スマホ入力→省略して即レス/他人に同調→あえて断定せず 若者の会話やネットの投稿で、不可思議な言葉に出合うことはありませんか。周囲の親世代からも「あれってどういう意味?」との声が聞こえてくる。調べ...
「こちら編集局です あなたの声から」では、みなさんが日ごろ「なぜ?」「おかしい」と感じている疑問やお困りごとなどを募っています。その「声」を糸口に、記者が取材し、記事を通じて実態や話題に迫ります。以下のいずれかの方法で、ご要望や情報をお寄せください。
LINE公式アカウント
メール
「こちら編集局です」ご意見・情報提供はこちら
郵送
広島市中区土橋町7-1
中国新聞社
「こちら編集局です」係
ファクス
「こちら編集局です」係
082-236-2321