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偽り?の多様性

2020/10/30 6:35

 やたら「チャイナ・バイラス」と繰り返すトランプ米大統領の口舌を聞きながら、ふと思い出した。英語のvirusを「バイラス」と読まず、もっぱらドイツ語風に「ビールス」と言い習わしていた時代のことを▲頃は昭和半ば。医師の多くが「ビールス」と言い、私たちも紙面で使ってきた。ところがコンピューターの普及も相まって、ラテン語の読み「ウイルス」が次第に浸透していく。言葉としても響きやすく、平成の世には押しも押されもせぬ日本語に▲こちらの言葉選びは、どうもしっくりこない。日本学術会議の会員任命拒否問題だ。「会議からの推薦を受け、首相が形式的に任命する」との政府答弁がここにきて「必ずしも推薦通りでなくていい」へと様変わりした▲さらに国会で菅義偉首相は、会員の出身や大学に偏りがあり「多様性が大事だということを念頭に私が判断した」と言い切った。当初の推薦名簿を詳しく見ることもせず、しかも6人の欠員を生じさせておいて、一体どこが多様性の尊重なのだろう▲政権への異論を封じ込めたいのだと受け取りたくもなる。言葉が自然に定着していくように、政治は学問に口出ししない方がいいのでは。

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