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携帯料金値下げ 利用者目線で競争促せ

2020/11/1 6:39

 菅義偉首相が強く求めている携帯電話料金の値下げに応じる形で、KDDI(au)とソフトバンクの携帯大手2社が割安な新料金プランを発表した。

 首相には携帯料金の値下げにこだわりがある。官房長官時代には「4割程度は下げられる」と公言。首相就任会見でも「大手3社が世界で最も高い料金で20%もの営業利益(率)を上げている」と指摘した。

 値下げを政権の目玉政策の一つに掲げ、総務省がその実現に向けた向けた「アクションプラン」を打ち出すなど、携帯会社への圧力を強めている。

 今や携帯電話は生活に欠かせないインフラであり、料金の引き下げは時代の要請と言える。家計への負担軽減につなげるとする狙いは理解できる。国民に分かりやすい目標を掲げることで、政権浮揚につなげる思惑もあるのだろう。

 もちろん大幅な料金の引き下げが実現すれば、消費者にとっては朗報だろう。だが民間企業の経営戦略や価格決定に、政府が過度に介入することは原則、避けなければならない。

 政府の役割は、新規参入を容易にしたりサービスの透明性を高めたりするなど、利用者目線で競争環境を整備することだ。料金は市場の自由競争に委ねるのが筋だろう。

 日本の市場は、NTTドコモとKDDI、ソフトバンクの大手3社で契約数の9割近くを占める。ことし4月には楽天モバイルが新たに参入し、格安スマートフォン会社も登場しているが、寡占状態が続いている。

 顧客の流動性が低い市場では競争原理が働きにくい。これが国際的に見て割高な料金に高止まりしている要因とされる。

 総務省がまとめたアクションプランでも、顧客が利用する携帯会社の乗り換えをしやすくすることを柱の一つに据える。

 同じ電話番号のまま他社へ乗り換えられる「番号持ち運び制度」の手数料は来年度から原則無料とし、メールアドレスをそのまま使える仕組みの検討も始めることなどを盛り込んだ。

 現行の料金体系は、家族ぐるみの加入や光回線とのセットで割り引くなど、複雑で分かりにくい。内容を十分把握しないまま、中途半端な理解で契約している人も多いのではないか。

 総務省は専門用語を解説するなど料金プラン選びを手助けするサイトを年内に設ける。携帯各社も、契約手続きの煩雑さを解消し、分かりやすい料金体系への見直しに努力すべきだ。

 料金体系のうち、首相は特にデータ通信量が20ギガバイトの大容量プランが海外に比べて割高なことを問題視していた。KDDIとソフトバンクがいち早く打ち出した割安プランも、この20ギガバイトのものだ。

 新型コロナウイルスの影響でオンライン授業やテレワークが広がり、大容量通信の需要は高まっている。サービスが始まった第5世代(5G)移動通信システムを活用した動画などの新ビジネスにも追い風となろう。

 ただ利用者の多くは3ギガバイト以下のライトユーザーとされる。通話や電子メールで事足りる人たちで、高齢者に多い。政府が「家計への負担軽減」をうたうのなら、値下げの恩恵を広く長く行き渡らせる必要がある。「官製値下げ」を政権の人気取りで終わらせてはならない。 

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