山口県指定無形文化財技術保持者 米本文明氏(65)=山口市
2020/11/3 0:00
狂言「鷺流」 守り伝える
狂言の三大流派の一つで、明治維新後に家元が途絶えた「鷺流」。現在、鷺流で唯一の山口県指定無形文化財技術保持者として、狂言教室の開催や江戸時代の文献を基にした新作の上演など伝承に取り組んでいる。鷺流を滅ぼしたくない―。その信念で、家元のいない「市民流派」の発展と後継者の育成に精を出してきた。
狂言と出会ったのは、就職浪人中の23歳のとき。知人に誘われて参加したセミナーに、鷺流の伝承活動をする山口鷺流狂言保存会が出演していた。「若手がほしい」と勧められ、入会。就職後は公務員として働きながら稽古に励んだ。
転機は2000年、東京・国立能楽堂での、師匠かつ技術保持者の小林栄治さん(17年に92歳で死去)との共演だった。稽古は口頭で伝承する「口伝」が基本。小林さんの姿から舞台上での立ち居振る舞い、息づかいを学んできた。特別な舞台で身をもって感じた。「彼のすごさ。それが分かったとき、狂言から離れられなくなりました」
02年に技術保持者となった後は、週1回、山口市内で10〜80代の会員約20人の指導に当たっている。責任を感じながらも、肩に力を入れすぎないよう所作を伝えていく。演者としては年30回以上、県内外で舞台に立ち続ける。「芸はネバーエンディング。到達点はありません」と笑う。
今最も力を注いでいるのは、次の技術保持者の育成である。「次世代へバトンを渡すことが1番の使命です」。これからも山口で生き続ける伝統芸能を守り抜く。(山下美波)
よねもと・ふみあき 山口市生まれ▽1977年、高知大文理学部卒▽78年、山口鷺流狂言保存会に入会▽2001年、「山口鷺流狂言資料集成」の編集に携わる▽02年、山口県指定無形文化財技術保持者に認定▽11年、山口県文化功労賞▽16年、山口県選奨
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