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大阪都構想、再び否決 都市再生の宿題残った

2020/11/3 7:09

 大阪市を廃止して東京都のような特別区を四つ新設する「大阪都構想」は、住民投票で再び反対多数となり、否決された。

 地方政党である大阪維新の会が結党以来10年にわたって掲げ続けてきた公約だが、5年前の前回に続き、市民から2度目の「ノー」を突きつけられた。

 大阪が発展して活気づくことは願っても、不透明な制度改革には乗り切れなかったということだろう。130年以上も続く由緒ある大阪市をなくすまでもないという市民の判断は変わらなかった。

 都構想はもともと高齢化が首都圏よりも先に進み、経済の地盤沈下が懸念される状況を打破する手段として、大阪維新前代表の橋下徹氏が府知事時代に打ち出した。

 大阪府と大阪市の役割分担を見直し、2重行政の解消を図ることを狙った。大阪市の持つ都市整備や産業政策など成長分野に関わる広大な権限と財源を大阪府に一元化する。教育や福祉といった身近な住民サービスは特別区が担うことなどが柱だ。

 2015年の住民投票で否決されたが、知事と市長が入れ替わる昨年春の「クロスダブル選」で圧勝したことで、2度目の投票にこぎ着けた。反対していた公明党も賛成に転じ、前回から構図も一変していた。

 当初は賛成派が有利とみられていたが、結局は否決された。

 特別区に移行した後、住民サービスがどう変わり、どれだけ負担を求められるのか。さまざまな疑問や不安を感じる市民がいるのは当然だ。しかし、自治体の形を変えることのメリットとデメリットについて十分な説明を行ったとは言い難い。

 再編後の特別区の財政見通しが甘く、コロナ禍の影響を考慮していないとの批判も出た。特別区の間で格差が生じても、調整は難しくなる。反対派による「財源が不足すれば、サービスが低下する」との訴えが徐々に浸透していった。

 大阪維新は、5年後に開催される大阪・関西万博や、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)の誘致を起爆剤にして、訪日外国人客の拡大につなげる成長戦略を描いていた。

 だがコロナ禍の影響で、思惑通りに地域活性化につなげられるかどうかは見通せなくなっている。成長への期待感よりも、変化に対する市民の不安感が上回った結果だろう。

 都道府県と政令市の関係はどうあるべきか。地方行政の課題を直接投票で住民自ら選ぶ機会が2度も設けられたことは評価できる。大都市行政の問題は広島県と広島市の関係にも通じよう。地域の実情に応じ、都市を再生、強化していく制度について議論を深める契機にしたい。

 10年にも及び、大阪市民を二分してきた論争にようやく終止符が打たれる。分断と対立を深めてきた責任も重い。

 橋下氏から大阪維新を引き継いだ松井一郎・大阪市長は任期いっぱいで退任し、政治家を引退する意向を示している。吉村洋文大阪府知事も「都構想に挑戦するのはこれが最後」と公言している。

 約束を守るのは当然だが、コロナ対応など喫緊の課題は山積している。まず反対派との分断を修復し、幅広い理解を得ながら、真に大阪のためになる政策の実現に努めるべきだ。 

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