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NHK届け出義務化 自己点検と改革が先だ

2020/11/4 6:46

 テレビを持っているかどうかを家庭や事業所はNHKに届け出なければならず、テレビがあるのに届け出ないと「罰金」も―。そんな新制度をNHKが総務省の有識者会議に要望した。

 受信契約をしていない世帯の居住者の名前や、転居した場合は転居先などの個人情報を、公的機関などに照会できる仕組みの導入まで求めた。未契約者の居住地を把握する狙いだ。受信料の徴収にかかる経費を減らせるとNHKは説明する。

 だが公共放送は国民の信頼があってこそのものだ。これまで視聴者の理解の上に支払いを求めてきたが、「強制」へ変質させるのが果たして適切なのか。

 NHKが求める新制度について、有識者からは早速、異論が出た。「テレビを未設置なら契約義務がないのに、届け出の義務化は整合性が取れない」と。個人情報の照会についてはプライバシーに関わり、乱用を懸念する声が上がったのも当然だ。

 受信料支払率は83%で、残る17%は支払っていないという。不公平感が指摘されてきた。

 最高裁は2017年に受信料制度を合憲と認めた。しかし業務内容などの説明によって「契約締結に理解が得られるよう努めること」を求めてもいる。

 受信契約を結ぶことに十分な理解が得られていないのは、NHKの経営や報道の姿勢などに、疑問や不信感が抱かれているからではないのか。「強制」の前に、まずは自らの問題点を洗い出し、改めるべきだ。

 放送法はテレビ設置者に受信契約締結を定めているが、契約強制の規定はなく罰則もない。公共放送として責務を果たしていると認める視聴者が契約を結ぶことを想定したものだろう。

 では、NHKの何が問われているのか。一つには、政権との距離である。「政府が右と言うものを、左とは言えない」。14年にNHK会長に就任した籾井(もみい)勝人氏はそう述べた。報道機関としての根幹が揺らぐ発言だ。

 現会長は「政権とは距離を置く」と述べたが、安倍晋三前首相に近い人物で、就任には官邸の意向が働いたとされる。

 NHKを監督する経営委員会も役目を果たしているとは言い難い。かんぽ生命保険の不正販売を報じた番組に、経営委は日本郵政グループの介入を許し、会長を厳重注意した。報道機関の自主自律を揺るがした。

 エンターテインメント性を追求し、民放と変わらぬ番組内容にも批判がある。アイドルやお笑い芸人を多く出演させて多額の経費をかける番組作りは、疑問視されても仕方あるまい。

 事業肥大化も厳しい視線を浴びることから、23年度までの次期経営計画案では、AMラジオ放送のチャンネルを一つにするといった縮小方針を示した。

 しかし、ラジオは災害時に心強い上、語学講座などもニーズが高い。むしろ公共放送として担うべき役割のはずだ。

 その一方、テレビ番組をインターネットに流すなどのネット業務費は受信料収入の2・5%を上限とするルールの撤廃方針を示した。これでは業務の肥大化に歯止めがかからず、「民業圧迫」が進みかねない。

 年7千億円を超す受信料をNHKは集めている。どんな公共メディア像を描くのか。まずは信頼される公共放送となり、国民の理解を得ねばならない。

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