生きて

<1> 宇宙と仏教 不思議な縁に導かれて

宇宙物理学者・僧侶 観山正見さん(1951年〜)2020/10/29 12:00
「宇宙と仏教は根底でつながっている」

「宇宙と仏教は根底でつながっている」

 観山正見さん(69)=東広島市福富町=は宇宙物理学の研究者と浄土真宗本願寺派僧侶の二つの顔を持つ。国立天文台(東京都三鷹市)で台長を務め、南米チリのアルマ望遠鏡の建設にも携わった。退職後は広島大特任教授を務める傍ら、実家の寺の住職として地域との関わりを紡ぐ。宇宙と仏教。この二つは、確かな糸でつながっている。

    ◇

 幼い頃、見上げた夜空は星がとてもきれいでした。ずっと眺めても飽きることはなかった。でも天文少年だったわけではありません。天文学なんて意識もしていませんでした。

 実家が浄土真宗の寺でした。祖父は大学でインド哲学、父は中国哲学を専攻し、家には仏教や哲学、倫理学などたくさん本がありました。ただ、こちらもぴんとこなかった。長男なのでゆくゆくは寺を継がなければと思っていても、ある種の反発もありました。「別の道もあるのではないか」って。湯川秀樹さんやアインシュタインへの憧れから、理論物理の道を志すことにしたのです。

 湯川さんといえば素粒子研究の第一人者。ミクロの世界を追うはずがなぜマクロな宇宙物理へ進んだか。それは大学院の素粒子研究室が難関で入れなかったからです。この挫折が、宇宙と引き合わせてくれた。宇宙を調べるうち、人間の存在価値についても考えるようになりました。

 宇宙は138億年前にビッグバンという大爆発で始まりました。その後、星が生まれては死ぬことを繰り返し、鉄や酸素、炭素などが宇宙空間にばらまかれました。太陽ができるとき、それらのごみが集まって地球ができ、数億年後、生命の最初の一個の細胞が生まれました。その細胞が進化し続けたのが私たち。宇宙の無機的な営みをたどると、現在の私たちに行き着くのです。

 これは仏教の教えそのもの。存在するものは姿も本質も時間をかけて変化する「諸行無常」であり、全てはいろんな物事から影響を受け因縁によって生じるという「諸法無我」の教えに通じます。宇宙と仏教はかけ離れているようで根底でつながっている。この二つに関わる私は不思議な縁に導かれた気がするのです。(この連載は報道センター文化担当・里田明美が担当します)

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