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学術会議の任命拒否 副長官の招致が必要だ

2020/11/6 6:38

 「学問の自由」を揺るがしかねない選別に関与したキーパーソンが明らかになった。

 政府から独立した立場で政策を提言する科学者の組織「日本学術会議」が推薦した新会員候補のうち、6人の任命を菅義偉首相が見送った問題に、杉田和博官房副長官が関わっていた。6人の拒否について、副長官から報告を受けた後で決裁したことを首相が認めた。

 任命拒否自体、日本学術会議法から逸脱している。もし仮に拒否が可能だとしても、選別は任命権者の首相しかできないはずだ。官房副長官が、その権限を行使することは許されまい。

 しかも首相は、6人の研究や業績について、1人を除き「知らなかった」という。なのになぜ、学術会議の推薦を官房副長官の選別より軽んじたのか。

 首相は「私の懸念を伝えられた内閣府が起案して、私が決裁した」と国会で説明した。何を懸念したのか。その懸念は6人とどう関係しているのか。国会の場で、きちんと説明しなければならない。

 任命の経緯について、副長官と内部協議した際の公文書があり、内閣府が管理しているという。ならば政府は公開し、拒否した理由を明らかにすべきだ。

 国会としては、杉田副長官を招致し、選別の理由や経緯を説明してもらう必要がある。

 この問題では、菅首相が説明するたび、矛盾が次々明らかになっている。当初は「総合的、俯瞰(ふかん)的な活動を求める観点から判断した」との説明を繰り返していた。しかし国民の理解は得られず、新たに持ち出した理由が「多様性の確保」だった。

 会員には民間出身者や若手が少なく、七つの旧帝大に偏っているというのだ。拒否理由の説明になっていないばかりか、矛盾に満ちている。6人の半数は私立大の所属で、若手や女性も含まれている。こうした人を拒否したのでは多様性の確保に逆行する。「説明が支離滅裂」との批判が出るのも当然だろう。

 そもそも学術会議法に基づく首相の任命権について、政府は1983年の国会で「推薦していただいた者は拒否はしない。形だけの任命」としていた。

 さらにその年、政府は、首相による学術会議への指揮監督権を否定する文書を作成していた。特に法律に規定するものを除き、指揮監督権が及ぶのは予算や事務局職員の人事などに限る、というわけだ。こうした文書や国会での説明を見る限り、解釈変更は明らかだ。変更していないとの説明は強引すぎる。

 政府は「内閣法制局の了解を得た」とも言うが、国権の最高機関である国会での議論や説明抜きに解釈を変更できるはずはない。法制局には国会を上回る権限があると言うのだろうか。

 学術会議に限らず、どんな組織でも時代やニーズに合わせた見直しは欠かせない。しかし組織改革は、任命拒否の問題とは別次元の話である。政府がわざと論点をずらそうとするなら、あまりに不誠実だ。官房長官の時は受け答えが不十分でも切り抜けられたと考えているのかもしれない。しかし首相である以上、ごまかしは許されない。

 学術会議は今、会員が210人に達しておらず、違法状態にある。解消できるのは首相だけだ。素直に非を認めて任命拒否を撤回する必要がある。

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