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ヤングケアラー調査 孤立させぬ仕組み築け

2020/11/7 7:04

 病気や障害、依存症のある家族の看病や介助だけではない。家計を支えるためのアルバイトや家事、幼いきょうだいの世話などにも追われている―。「ヤングケアラー」と呼ばれる18歳未満の家族介護者の実態調査に厚生労働省が乗り出す。

 授業を休みがちになったり、進路の選択肢を狭められたりして将来に影を落とす恐れも指摘される。コロナ禍で、負担や孤立感がなおさら増していても不思議ではない。

 国はもとより自治体も、教育や福祉など部局の連携で支援策の構築を急ぐべきだ。

 国勢調査にも「ヤングケアラー」の項目があるという英国と違い、日本ではその人数や介護負担などのデータを政府も自治体も持ち合わせていない。存在を可視化する点で、今回の調査には重い意味合いがある。

 研究者などが2016年に大阪府内の公立高、18年に埼玉県内の公立高で行った調査では、いずれも約20人に1人の割合で当てはまる生徒がいた。

 日本ではなぜ、これまで「ヤングケアラー」の実態把握が遅れてきたのだろう。

 身近に相談相手がいなかったり、行政の相談窓口を知らなかったりということもあるだろう。それ以上に、いや応なしに置かれた自らの境遇に問題意識を持つことができず、「助けてほしい」との声を上げられなかったのではないか。

 背景として、「家族で支えて当たり前」「自助が最優先」といった社会の風潮がある。

 岡山市では今年6月、在宅介護サービスが足りないとして拡充を求めた難病「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」の患者男性に対し、同居する高2の娘による介護で補うように市側が求めていたことが明らかになった。結局、一部拡充が認められたものの、福祉行政の不足が子どもにもしわ寄せしている一端とも受け取れる。

 そうした風潮を変えるためにも、「ヤングケアラー」が背負っている現実や課題を明らかにし、社会で広く共有することが欠かせまい。

 すでに、調査と支援に乗り出している自治体もある。

 埼玉県は、全世代の家族介護者に向けた県ケアラー支援条例を今年3月に施行し、「ヤングケアラー」も支援の対象に位置付けた。適切な教育の機会の確保、心身の健やかな成長や発達、自立を基本理念に明記している。高校2年生を対象として独自の実態調査をし、来年春に支援推進計画をまとめる。

 厚労省が12月にも取り掛かる調査は、教育委員会に調査票を配る方式で文部科学省と調整中だという。

 先行調査の結果などから、小学生や中学生がケアの担い手になっているケースも珍しくないようだ。埼玉県と同じく高校生から調査するとしても、きょうだいの状況も聞き取ることはできないものか。学力や進学、進路への影響もつかむには、教職員たちの視点を反映させる必要もあろう。

 「ヤングケアラー」の負担を減らし、孤立から守る支援体制をどう築くか。そのためには、子どもらが抱えている問題をいかに掘り起こすかが調査の鍵になる。できる限り当事者に近づき、実態が読み取れるように工夫を凝らしてほしい。

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