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もう一つの「警戒レベル」

2020/11/7 7:03

 茶の湯の道具に野鳥からの贈り物が一つある。羽箒(はぼうき)である。研究者の下坂玉起(しもさか・たまき)さんが900本近くを調べ歩いたら、最も多いのは鶴の羽。最も珍しいのはペンギンの羽で、何でも戦前の南極捕鯨の土産だったようだ▲炉の周りの炭の粉や灰を掃く羽箒。茶人自らこしらえた。ナベヅルは「黒鶴」、何とペリカンは「大鳥」と昔の書き付けにある。コウノトリを指す「鴻鶴(こうづる)」は、日本では絶滅した鳥が身近に生息していた証しであり、名物茶器に劣らぬ価値があろう▲その姿に今なら人は時として身構える。毒性の強いウイルスは野鳥のはらわたで繁殖し、ふんを通して感染を広げると聞く▲香川県の養鶏場で高病原性鳥インフルエンザが確認され、野鳥への警戒も最高レベルに引き上げられた。先月、北海道で野鳥のふんから見つかっている。なぜ今度は、四国で一度に数千羽の鶏を死に至らしめたのか。まずは封じ込めを急ぐしかない▲環境省が示す「野鳥との接し方」に野鳥の亡きがらに素手で触らない、ふんを靴で踏まない―とある。とはいえ、コロナ禍にあっては癒やしにもなる、生きた立ち姿を見る分には問題なさそうだ。あの見えない贈り物だけは、ごめんである。

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