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名捕手の勲章

2020/11/8 6:41

 失礼かもしれないが、広島弁なら「こすい」という表現がぴったりきそう。広島東洋カープの元捕手、達川光男さん。死球が「当たった、当たっていない」と悶絶(もんぜつ)する迷演を覚えているファンも多いのではないか▲捕手と打者の駆け引きはだまし合いと言われる。ストライクに見せる捕球技術も大切である。したたかさも求められる資質の一つか。言葉の響きは悪くとも「グラウンドの詐欺師」と呼ばれたのは名捕手の勲章だろう▲こちらの迷演も印象に残る。投球を取り損ねて見失い、一塁ランナーが進むのを阻もうと、とっさに土をつかんでボールを投げるふりを―。今季限りで引退を表明した石原慶幸捕手の7年前のプレー。きのうマツダスタジアムでセレモニーがあった▲広島一筋19年。リーグ歴代7位の1598試合でマスクをかぶった。低迷期からチームを支え、3連覇にも貢献。入団時には自らの個性を「平凡」と評していたが、記憶にも記録にも残る名捕手に。それでも、いつも一歩引いて投手やチームメートを引き立てる黒子に徹していた▲「チームの力に」が口癖だった。そのために平凡を演じ通してきたのなら、したたかさでは達川さんより上手かも。

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