コラム・連載・特集

女性の自殺増 要因分析し支援策急げ

2020/11/8 6:41

 長引く新型コロナウイルス感染拡大で雇用や日々の暮らしへの影響が長引く中、女性の自殺が増加している。

 政府は有識者による「コロナ下の女性への影響と課題に関する研究会」を設置した。今月から自殺や解雇、ドメスティックバイオレンス(DV)被害などの実態調査に乗り出す方針である。増える自殺の背景や要因を速やかに分析し、相談態勢や支援策に生かさねばならない。

 警察庁によると、2019年までの全国の自殺者は10年連続減少し、ことしに入ってからも6月までの自殺者数は前年同期に比べ減っていた。ところが7月には大幅に増えて1800人台となり、8月には過去最多の1854人に上った。

 9月の自殺者数は1805人で8月よりはやや減ったものの前年同月比では8・6%増である。男女とも増えているが、とりわけ女性の増え方が目立つ。9月の自殺者のうち女性は639人。男性は前年同月比で0・4%増だったのに対し、女性は27・5%と大幅に増えている。

 雇用状況が大きく影響しているのだろう。女性はパートや派遣社員など非正規雇用で働く人が多い。そのためコロナ禍による景気の悪化で、解雇や雇い止めなどの影響を受けやすいと、かねて指摘されてきた。特に外出自粛などで影響を受けた対面サービス業や観光業などは、女性の雇用者が6割前後を占めているという。

 厚生労働省が発表した10月30日時点のコロナ関連の解雇・雇い止めは、見込みも含めて6万9130人でその約半数を非正規雇用が占める。研究会で提出された資料でも、女性の就業率が3月以降、大きく低下していることが明らかになった。

 橋本聖子・男女共同参画担当相は「新型コロナの影響は女性に特に強く表れている」と認め、実態調査で自殺につながる要因などを詳しく検証し、今後の対策につなげる方針だ。今まさに困窮している人が救える支援を急がねばならない。

 女性の自殺が増える背景は、雇用問題に限るまい。働いているかどうかにかかわらず、ことしの春以降は感染を避けるため家族が家にいる時間が増えている。現状で家事や子育て、介護などを担うのは大半が女性だ。先の見えないコロナ禍で負担増は続いている。家にいることでDVや虐待のリスクが高まることにも目を向ける必要がある。

 性暴力被害の相談も増えているという。橋本氏はおととい、性暴力に関する全国のワンストップ支援センターに寄せられた相談件数が4〜9月に前年同期比15・5%増だったと明らかにした。出会い系サイトなどで知り合った人から受けた被害相談が増えており、コロナ禍が影響している可能性が高いという。被害者が孤立し追い詰められることのないよう目配りが要る。

 コロナの影響が長期化すれば心理的抑圧はさらに深刻化する。相談窓口を万全に整えるほか、雇用継続を図る雇用調整助成金の拡充や、本当に必要としている人に届く現金給付など、あらゆる手を尽くしてほしい。

 コロナ感染による死者を抑えることができても、コロナ関連で自殺に追い込まれる人が増えては元も子もない。困難に直面している人を一日も早く救える施策を丹念に重ねるべきだ。 

  • 前の記事へ
  • 次の記事へ

 あなたにおすすめの記事

社説の最新記事
一覧