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立皇嗣の礼 皇位継承考える契機に

2020/11/11 6:36

 コロナ禍で半年余り先送りされていた「立皇嗣(りっこうし)の礼」が、皇居で行われた。秋篠宮さまが皇位継承順1位の皇嗣に就いたことを内外に示す儀式で、昨年から続く国事行為としての天皇代替わり行事は幕を閉じた。

 これを受けて、政府はようやく安定的な皇位継承策の本格検討に乗り出す。2017年6月に成立した退位特例法の付帯決議で、皇族の年齢から考えて「先延ばしすることはできない重要な課題」だと、くぎを刺されていた。加えて速やかな検討と結果の国会報告が求められた。にもかかわらず、政府は3年余り事実上放置していた。

 憲法で定められた国民統合の象徴である天皇に関する大事な問題だ。しかも象徴天皇の地位は主権の存する国民の総意に基づく、と定められている。つまり私たちこそ象徴天皇の望ましい姿を選択できると言えよう。そう意識した上で、皇位継承の在り方を考えるきっかけにしなければならない。

 菅義偉首相は国会で「決議の趣旨を尊重して対応したい」と答弁した。しかし、この期に及んでも政府は及び腰のようだ。男系天皇を維持するのか、それとも女性・女系天皇を容認するのか。意見が対立するとみて、結論提示を見送る考えが政府内で強まっているという。

 皇位継承は今、危機的状況にある。皇室典範では、男系男子が継ぐことになっているが、若い世代は、秋篠宮さまの長男の悠仁(ひさひと)さましかいないからだ。

 皇族の先細りも気になる。皇室典範は、女性皇族が天皇、皇族以外と結婚したら皇籍を離れると定めている。近い将来、天皇陛下の長女愛子さまや、秋篠宮さまの長女眞子さま、次女佳子さまが皇籍を離れる可能性がある。皇室として公務が十分果たせなくなるのではないか。

 先細りを防ぎつつ、皇位継承の選択肢を増やすことにもなる策として、女性宮家の創設も、付帯決議に盛り込まれている。

 しかし強い反対がある。女性宮家は、女性・女系天皇容認につながりかねないというのだ。男系維持を掲げ、旧宮家(旧皇族)の男子に皇籍を与える案を主張する自民党の保守系議員である。前の安倍政権はそうした議員を支持基盤としていたため、議論を先送りしてきた。

 しかし旧宮家は戦後70年以上、皇籍を離れて民間人として生活してきた。今になっての皇籍復帰に、国民の理解が得られるだろうか。

 共同通信が今春実施した世論調査では、復帰反対は70%と、賛成の28%を大きく上回った。

 逆に女性天皇と、母方に血筋のある女系天皇への理解は進んでいる。女性天皇容認に「賛成」「どちらかといえば賛成」は85%に達した。女系天皇には79%が賛成の意向を示した。

 そんな考えは自民党からも聞こえてくる。二階俊博幹事長は4年前「女性尊重の時代に天皇陛下だけ女性は適当ではないというのはおかしい」と指摘。今年8月には、河野太郎防衛相(当時)が「男系維持はかなりのリスクがある」と女系天皇を容認する考えを示している。

 伝統を尊重しつつも、時代の流れに合わせて、どう変化させていくべきか。もう先送りは許されない。政府は国民の理解が得られるよう、開かれた議論を重ねなければならない。

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