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【こちら編集局です】突然の悲劇、向き合うには 「愛する赤ちゃん 寝ている間に亡くなった。どうして」 同じ境遇の人と支え合いを

2020/11/11
「小さい子を見ると優真と重ねてしまう」。手作りの授乳表を手に遺影を見詰める長尾さん

「小さい子を見ると優真と重ねてしまう」。手作りの授乳表を手に遺影を見詰める長尾さん

 元気だった赤ちゃんが、眠っている間に亡くなってしまうことがある。乳幼児突然死症候群(SIDS)という原因不明の病。生後間もない愛息を失った広島市内の夫妻が、編集局に悲痛な声を寄せた。突然、子どもを亡くした家族の悲しみは深い。周囲を含め、その悲しみにどう向き合えばいいのだろう。今月は厚生労働省が定めるSIDS対策強化月間。夫妻を訪ね、思いを聞いた。

 声を寄せてくれたのは中区の長尾崇義(たかよし)さん(28)夫妻。案内された自宅リビングには、目をぱっちりと開けた愛らしい男児の遺影が飾られていた。8月下旬、生後41日で急逝した次男の優真(ゆうしん)ちゃん。長尾さんは「睡眠中に突然…。今も気持ちの整理がつかない」と声を絞り出した。

 新型コロナウイルスの影響で出産に立ち会えず、優真ちゃんに会えたのは退院した日だった。1日50グラムのペースですくすく大きくなり「抱っこするたびに成長を実感した」。夫妻が量や時刻を小まめに書き込んだ手作りの授乳表は枚数を重ねていった。そんな日々に突然、別れが訪れた。

 あの日の朝。夫妻が目を覚ますと、そばで寝ていた優真ちゃんは冷たくなっていた。5時間ほど前、元気にミルクを飲んだばかり。すぐに救急車を呼んで必死に蘇生を試みたが、息は戻らなかった。

 事件性の有無を調べるため夫妻は広島県警から事情を聴かれ、優真ちゃんは解剖されることに。解剖前、警察署の安置室で対面した優真ちゃんは冷たい台の上に寝かされ、触れることさえできなかった。4日後、体中を包帯で巻かれた姿で戻り、2人の悲しみに追い打ちをかけた。告げられた死因は「不詳」だった。

 「赤ちゃん、今日はいないの?」。優真ちゃんの死を知らない知人からの言葉が夫妻の心に突き刺さる。ミルクの飲ませ方が良くなかったんじゃないか、どうしてもっと早く異変に気付いてあげられなかったのか―。「元気に産んであげたら良かった」。気付くと自らを責めてしまう。長尾さんは、亡くなる直前まで優真ちゃんが使っていたガーゼを洗わずに財布に入れて持ち歩いている。

 「乳幼児の場合、基礎疾患や既往歴を持っているケースが少なく、死因の特定は難しい」。県立広島病院(南区)新生児科の福原里恵主任部長はそう説明する。SIDSは国内で6千〜7千人に1人が発症するとされる。昨年は78人に上り、乳児期の死亡原因として第4位。優真ちゃんも今後、病理検査などを経てSIDSとされる可能性がある。

 行き場のない苦しみを抱え続ける親たちはどうすればいいのか。福原医師は同じような立場の仲間同士が支え合う「ピアサポート」の大切さを挙げ、「同じ道を乗り越えてきた人たちと経験や思いを共有する意義は大きい」と強調する。

 「早く忘れなさい」「次の子を産めば」。周囲の人の何げない励ましの言葉は当事者を苦しめることがある。福原医師は、より多くの人がピアサポートへの理解を深め、いざというときにアプローチできることが重要だと指摘する。

 SIDSや他の病気、流産などで子どもを失った親たちでつくるNPO法人「SIDS家族の会」(東京)の田上克男理事長(66)は「突然わが子を失った苦しみは計り知れない。悲しみを分かち合える仲間が全国にいることを忘れないでほしい」と力を込める。同会の伝言専用ダイヤルTel050(3643)6546。(藤田龍治、小林可奈)

 <クリック>乳幼児突然死症候群(SIDS) 主に1歳未満の赤ちゃんが、予兆や既往歴もなく突然亡くなる原因不明の病気。厚生労働省によると(1)1歳になるまではあおむけに寝かせる(2)できるだけ母乳で育てる(3)妊婦本人が喫煙せず、妊婦や赤ちゃんのそばでたばこを吸わない―の3点を守ることで発症率が低くなるとのデータがあるが、予防法は確立されていない。寒い時期に起こりやすいとされることから、同省は11月を対策強化月間としている。

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