
溝手氏側、広島市議へ資金提供打診 参院選2カ月前 「買収」懸念し実行せず【決別 金権政治】
2019年7月の参院選広島選挙区で自民党の現職候補だった溝手顕正氏(78)の事務所が参院選の2カ月前に、広島市議会の自民党系会派に所属する市議に資金提供を持ち掛けていたことが11日、分かった。自民党の分裂選挙が決定的になった影響で、党広島県連が所属議員に出す政治活動費の上積み分を見送ったのがきっかけだったという。最終的には「買収に当たる恐れがある」と判断し、実行はしなかった。
複数の同党県連関係者によると、2議席が改選される広島選挙区は通常、与野党で1議席ずつ分け合う無風区で、県連は1人の自民党公認候補を支援。参院選のある年は、県連が年2回ほど県議や市議たち所属議員の党支部などに出す政治活動費のうち、1回分を上積みしてきた。額は県連幹事長が決定し、議員によって異なる。
中国新聞の調べでは、前々回の参院選があった16年でみると、参院選がなかった18年と比べて、市議と県議の少なくとも計65人に各10万〜60万円が増額されていた。
しかし19年の参院選では県連の主流派の議員が推す現職の溝手氏に加えて、党本部主導で河井案里被告(47)を擁立することが同年3月に決定。関係者によると、党内で分裂選挙となるため、県連内の意見調整などが難しく、上積みが見送られたという。
こうした中、同年5月に溝手氏の秘書が市議会議事堂を訪れ、自民党系議員が属する複数の会派の幹部に「政治活動費を振り込みたい」と要請。溝手氏の党支部から市議の党支部に入金し、領収書を発行して政治資金収支報告書にも載せることを想定していた。会派の一部では各議員に振込先などを提出させる動きもあり、応じた市議もいた。
溝手氏側は「県連から流れないので、こちらから流そうと思った」と説明。県議への働き掛けも予定していたという。
ただ、「参院選前にばかなことをしない方がいい。誤解される」と資金提供を拒む市議もいた。溝手氏側は、参院選前に候補者本人の党支部から一斉に入金すると目立つ点も考慮。最終的に「公選法に触れる可能性がある」として中止した。
同選挙区では案里被告が初当選し、溝手氏は落選した。その後、案里被告と夫で元法相の克行被告(57)による大規模買収事件が発覚。河井夫妻は県議や市議ら100人に計2901万円を配ったとして公選法違反罪に問われ、東京地裁で公判が続いている。
一方で、溝手氏側も参院選の1カ月前に、元県議会議長の奥原信也県議(78)側に50万円を提供していたことが判明。溝手氏側は「政党支部間の交付金で法的に問題はない」としているが、専門家は、公選法が禁じる買収に当たる可能性があると指摘している。
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