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生き物たちとの遭遇

2020/11/13 6:29

 太田川デルタの西側を並行して走る山並みを、誰が名付けたか、広島南アルプスと呼ぶ。標高500メートルにも満たない低山ばかり連なるものの、だからこそハイキングにはもってこい。手を伸ばせば届きそうな市街地の眺望も楽しい▲人恋しくなるほどに冷え込んだきのう朝、その南アルプス南端の鈴ケ峰の、そのまた南に広がる住宅地にイノシシが現れた。住民3人にかみつくなどし、最後は現場で駆除される騒動に▲中国山地に抱かれた安芸高田市でも同じ頃、わなにかかったクマに男性が襲われた。この秋、各地でクマの目撃情報や人的被害がかなり多い。しかも出没エリアがどんどん人里に重なる▲一方、人間の前から姿を消す生き物も少なくない。広島地方気象台の定点調査では今年、トカゲ、キアゲハ、ニホンアマガエルが観測されていない。都市化の進展により全国どこも似た状況で、気象庁はこの生物季節観測の対象を来年から、梅や桜の開花など植物6種だけに絞る▲予期しない遭遇を迷惑がり、待っていて現れないと今度は寂しがる。そうした人間の勝手気ままさを生き物が教えてくれる。度重なるイノシシやクマの出没もきっと、山からの使者なのだ。

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