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3次補正編成 緊急度で施策絞り込め

2020/11/14 6:54

 菅義偉政権が、追加経済対策の策定と、3次補正予算案の編成に乗り出した。

 重点項目は、(1)新型コロナウイルスの感染拡大防止(2)ポストコロナへの経済構造の転換(3)防災、減災、国土強靱(きょうじん)化―の三つ。年明けの通常国会に出し、2021年度予算案と一体的な「15カ月予算」として、早めの成立・執行を目指すという。

 景気回復に向け、切れ目のない対応は確かに重要だ。しかし本年度は税収が当初見込みより大幅に落ち込み、借金に当たる赤字国債を大量発行した。補正にかこつけた便乗はないか。中身を厳しくチェックし、緊急度重視で施策を絞り込むべきだ。

 例えば国土強靱化。本年度まで3年間の緊急対策の延長が検討されているが、盛り込むのは優先度の高い施策に限る必要がある。それ以外は21年度に回すなど、めりはりが欠かせない。

 コロナ対策では、1次、2次補正で喫緊の施策、いわば「止血」策が強く求められた。57兆円を投じたものの、雇用危機は深まっている。解雇や雇い止めは7万人に達した。製造業、飲食業、小売業で目立ち、半数以上は非正規だという。

 ひとり親家庭の苦境や自殺者の増加にも歯止めがかかっていない。中小企業の倒産も相次いでいる。そうした困窮者に「公助」の手がきちんと差し伸べられているのか。1、2次補正の効果や残された課題について十分な検証が求められる。

 休業手当の一部を国が補填(ほてん)する雇用調整助成金の特例措置は12月末で期限切れとなる。政府は3次補正で、1月以降も続けるという。雇用情勢の悪化を考えれば当然である。

 医療や福祉、介護現場で働く人への支援の拡充も必要ではないか。通常業務でさえ過酷とされる上、感染症対策で肉体的・精神的な負担は増している。私たちの命や健康の支え手であることを忘れないようにしたい。

 3次補正では消費喚起も重視するという。「Go To」キャンペーンの延長などである。経済再生は必要だが、感染の「第3波」到来が懸念される現状を考えると、不安は拭い切れない。実施する際には、専門家の意見を聴き、状況を慎重に見極めなければなるまい。

 気になるのは、与党の前のめり姿勢だ。自民、公明両党の幹部は10兆〜15兆円の規模を念頭に置いている。しかし「30兆円ぐらいあってもよい」との意見が自民党内から漏れる。来年秋までの衆院選を前にアピールしたい思惑があるのだろうか。

 しかし中身より規模を優先するあまり、安易な「ばらまき」を繰り返してはならない。1次、2次補正では過去最大の事業規模にするため、不要不急の事業が盛り込まれ、批判された。忘れてはなるまい。

 3次補正の財源にも疑問が残る。1次、2次で積んだ予備費の残りを充てるという。国会論議を経なくても政府の裁量で使える予備費は緊急用で一定額は要るだろう。しかし2次で積んだ10兆円は多すぎた。7兆円余り残ったこと自体、妥当ではなかった証しと言えよう。

 財政状況の悪化で基礎的財政収支の黒字化は、さらに遅れそうだ。断念した25年度に代わる目標の提示が急がれる。コロナ禍であっても、財政規律を捨て去ることは許されない。 

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