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ため息誘う「エリア33」

2020/11/14 6:54

 大記録や金字塔の褒め言葉も月並みに思えてくる。とてつもない偉業に出くわすと、人は言葉に詰まるのだろうか。プロ野球で守備の名手とうたわれた面々も皆、形容に困っていた▲広島東洋カープの二塁手菊池涼介選手がシーズンを通して無失策、守備率10割を成し遂げた。80年を超す球界の歴史で一塁手以外の内野手は誰一人、その高みまで達したことがなかった。引けを取らない記録は、打者なら4割バッターくらいだろう▲単なるエラーなしではない。抜けたかと思った打球さえ難なくアウトにし、グラブトスの離れ業で併殺をものにする。神業のような、その守備範囲は背番号にちなんで「エリア33」の異名を取る。味方からは敬意を込め、相手は恐らくため息交じりで▲菊池選手は捕手のサインから打球の方向を先読みできても、動き出しをぎりぎりまで我慢する。守備位置から逆に配球を読まれるからだ。評論家の二宮清純(せいじゅん)さんがコラムにつづっていた▲エリア33が試合の流れを変え、呼び込んだ勝ち星も間々ある。「守り勝つ」カープ野球の申し子の守備力は攻撃力に等しい。誰もなし得なかったことを初めて達成する―。故事成語で「破天荒解(はてんこうかい)」という。

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