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オンライン診療 患者本位で普及目指せ

2020/11/16 6:41

 政府は、初診を含めた「オンライン診療」の恒久化に向けた議論を始めた。新たなルールの大枠について12月中にも方針を決めるとしている。

 医師の診断は、患者の命や健康に関わる。安全性や信頼性をどう確保するかといった課題は多い。患者本位の視点で、安心して利用できる仕組みを検討する必要がある。

 オンライン診療は、病院などに行かずにスマートフォンやパソコンなどを使い、テレビ電話などを通じて診察や薬の処方を受ける仕組みだ。

 離島やへき地などの遠隔診療として始まり、2018年度に指針が作られ、保険も適用されるようになった。ただ初診は原則対面とされ、対象も生活習慣病などに限られていた。

 新型コロナウイルスの感染が拡大し、院内感染を恐れて受診を控える患者が増えたことから、政府は4月に規制を緩和。特例的な措置として電話診療も含めて初診から認め、全ての病気を対象にした。

 菅義偉首相はデジタル化の推進を掲げている。特例措置の恒久化を実現させ、規制改革の成果として国民にアピールする狙いもあるのだろう。

 オンライン診療では、病院に出向く手間が省け、場所も選ばないことから利便性は高い。医療体制の脆弱(ぜいじゃく)な過疎地の高齢者や、外出が困難な患者が在宅で医療を受けられるメリットは大きい。災害時にも、有効な医療提供手段となり得る。

 一方で、直接触れる触診や聴診、検査などができる対面診療に比べて得られる情報が少なく、患者の状態の見極めが難しい。病気の見落としや誤診のリスクが高まるのではないかといった不安は、医師側にも患者側にもある。

 医療現場からは、病気の種類や診療科によって、オンライン診療には向き不向きがあるとの指摘がある。対象とする患者や病気の種類などについて、メリット、デメリットを慎重に見極める必要がある。

 日本医師会は、診療は対面が基本との立場に基づき、初診からのオンライン診療については「有事における緊急の対応」との見解を示す。中川俊男会長も会見で「初めて会う人の診断をオンラインでするリスクは計り知れない」と述べ、警戒感をあらわにする。

 初診は、病気の診断をつける必要があり、オンラインだけで判断するのは難しいとされる。特例として行われたオンライン初診など具体的な事例をもとに、医療としてどんな課題や効果があったのか、きちんとした検証が求められる。

 田村憲久厚生労働相も安全性を確保するため、初診は普段からかかっている「かかりつけ医」などに限る方針を示している。

 ただ、かかりつけ医の定義がはっきりしていないのが気掛かりだ。かかりつけ医を持っている人はそれほど多くないのではないか。範囲を狭めすぎれば、使い勝手が悪くなりかねない。

 デジタル機器の扱いに不慣れな高齢者や、経済的理由で購入できない人への配慮も検討課題となろう。

 安心で使いやすいオンライン診療が広がれば、国民にとっても有益だ。地域医療をしっかり支えていけるような持続可能な制度設計を急ぐ必要がある。 

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