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RCEP誕生へ 国内への影響、説明せよ

2020/11/17 6:44

 日本や中国、韓国、東南アジア諸国連合(ASEAN)など15カ国が「地域的な包括的経済連携(RCEP)」に合意し、協定に署名した。

 関税の削減や統一的ルールによって自由貿易を推進していくものだ。全世界で保護主義の動きが広がっており、さらに新型コロナウイルスの流行で経済の低迷が続く中、アジアに巨大な自由貿易圏が誕生することには意義があるだろう。

 15カ国の首脳は署名後の共同声明で、RCEPがコロナ後の経済回復へ重要な役割を果たすと発信している。

 発効すれば、国内総生産(GDP)、人口ともに合計で世界のほぼ3割を占める経済圏になる。また日本の貿易額に占める経済連携協定(EPA)締結国の割合は約8割になる。主要国では最高水準とみられ、自由貿易の足場を世界全域に築いたと言えそうだ。

 発効にはASEAN6カ国以上、ASEAN以外で3カ国以上の批准が必要という。今後、各国が発効へ向けた手続きに入っていく。

 政府は来年の通常国会に承認案を提出する方向で、来年中に手続きを終えたいようだ。

 輸出企業にとってのメリットが早速、注目されている。しかし私たち国民の暮らしにどんな恩恵があるのか。農業をはじめ国内の産業に、どのような影響が及ぶのか。丁寧な説明と議論が求められる。

 RCEPの交渉は2013年に16カ国で始めたものの、関税の撤廃・削減などを巡り協議は難航した。参加するアジア諸国の間で、経済の発展状況や政治体制が大きく異なるためだ。そのため関税引き下げの水準は、新興国に配慮して、経済力が比較的高い国の多い環太平洋連携協定(TPP)よりも抑えられている。

 それでも政府は日本にとってメリットは大きいという。国産の自動車部品など工業製品に参加国が課す関税は、最終的には撤廃率91・5%まで、段階的に下がる。輸出企業に追い風となるに違いない。

 コメ、麦、牛豚肉、乳製品、砂糖など日本の重要5項目は対象外にしており政府は「農林水産業への影響はない」という。だが乾燥野菜などの関税は撤廃していく。国内農業にどう響くか注視する必要がある。

 日本にとってとりわけ重要な意味を持つのは、貿易額が1位の中国、3位の韓国が含まれる初のEPAである点だ。関税の引き下げなどで両国への輸出がしやすくなるのは間違いない。

 また、外国企業に自国内へサーバー設置や、技術情報の提供を要求することを禁じたルールは大きい。技術移転の要求などは、これまで中国が進出企業に強要していた。禁止したルールを中国が守るか、しっかりとチェックし、企業に自由な活動を保障したい。

 一方、アジア経済圏を主導しようとする中国の動きにも警戒を強めねばならない。貿易摩擦などで米国と対立する中国は、国際社会で存在感を高めようと交渉妥結を急いだという。

 それだけに中国へのけん制役として期待されたインドがRCEPを離脱したのは痛い。

 協定にはインドの復帰を可能にする仕組みもある。粘り強く働き掛けを続けていくべきだ。 

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