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職人技の結晶「削り華」

2020/11/18 6:37

 鉋(かんな)をかける。名人上手の削りくずは薄く、向こうが透けて見える。絹のような肌触りも手伝い、時には天女の羽衣に例えられる。職人の応援団を自任した永六輔さんは、鉋くずを「削り華(ばな)」と呼んだ▲捨てるものにまで心を寄せ、いとおしむ。むしろ、そこに職人の粋(すい)があるのかもしれない。そうした心と技を受け継いだ精進のたまものだろう。宮大工や左官職人らの「伝統建築工匠(こうしょう)の技」はユネスコの無形文化遺産登録に値するとお墨付きが出た▲福山市新市町で進む国重文、吉備津神社本殿の大規模改修にも弾みがつくことだろう。1648年と伝わる再建年を裏付ける〈慶安元年〉、建築に携わったとおぼしき〈五郎兵…〉なる墨書の跡も先ごろ見つかった▲ただ、職人の門をたたき、弟子入りする若者は増えてはいない。小6男子の「将来就きたい職業」でこの夏、「大工・職人」が過去最高の3位に入ったものの、親側の「就かせたい職業」ランキングには気配すらない▲職人仕事は今、グローバル化や生産性競争といった目の粗いやすりにかけられている。こぼれ落ちても決して「削り華」としのばれまい。工匠の伝統を明日へとつなぐための心と技も要る。

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