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参院「1票の格差」合憲 是正の努力、なお続けよ

2020/11/19 6:57

 「1票の格差」が最大3・00倍だった昨年7月の参院選は違憲だとして、二つの弁護士グループが選挙の無効を求めた訴訟の上告審で、最高裁大法廷はきのう「合憲」の判断を下した。「著しい不平等状態とはいえない」のだという。

 2015年の公選法改正で導入された「合区」などによって、それまでの5倍近くから3倍余りまで格差は縮小している。「立法府の是正を指向する姿勢が失われたと断ずることはできない」というのが「合憲」の理由である。

 だからといって、3倍の格差をそのまま放置していいということにはなるまい。憲法は法の下の平等を定める。有権者1人が投じる票の重みは本来等しくあるべきだ。今回の最高裁判断は、格差是正に向けた努力を、国会に求めるものだろう。

 現に最高裁は、合区導入以降の国会の動きについて、「大きな進展を見せているとはいえない」とも指摘している。

 合憲の判断は裁判官15人のうち10人の多数意見だが、5人からは個別意見が示されたことも忘れてはならない。うち3人は「違憲」、1人は「違憲状態」とし、もう1人は「条件付き合憲」という個別意見を書いている。違憲とした裁判官の1人は、選挙権を「国民主権の基礎となる極めて重要な権利」であることに照らし、「国会は1票の格差が無い状態をデフォルトとして制度設計しなければならない」としている。

 原告の弁護士グループが「大きな前進」「プラスの判決」と受け止めたのは、格差是正に賛成する裁判官が増え、抜本的改革を求める内容になっているからだろう。

 参院選を巡り、最高裁は最大格差5・00倍だった2010年と、4・77倍だった13年の参院選を、いずれも「違憲状態」と判断した。それを踏まえて国会は、15年の公選法改正で、「島根と鳥取」「徳島と高知」の「合区」を含む定数の増減を実現した。しかし、15年の公選法改正以来、国会での選挙改革は足踏み状態だ。

 最高裁は格差が最大3・08倍だった16年参院選について争われた17年の訴訟で、合憲の判断を下している。それは、国会が「19年の選挙に向け格差是正などを考慮し、抜本見直しに必ず結論を得る」と決意を示したことを評価したためだ。だが18年の公選法改正では、合区の維持と、埼玉選挙区に限った定数調整だけに終わっている。

 小手先の数合わせではなく、選挙制度全体を見据えた改革が必要ではないか。単純に数字だけ見て格差を縮めようとすれば、合区の対象を広げる選択肢も出てこよう。しかし「合区」となった地域では投票率の低下も見られる。人口の少ない地方の声が国政に一層届きにくいと、解消を訴える声も根強い。

 現行は、衆参両院とも選挙区と比例代表の組み合わせという選挙制度だ。だが両院で異なる仕組みがあってもいいのではないか。第三者に検討を委ね、意見を聞く手もあろう。

 合区の拡大か、選挙区を取り払いブロック制にするのか、あるいは参院議員を都道府県の代表と位置づけるのか―。格差を是正するにはどうすべきか。国会で真剣に議論し、結論を導かねばならない。

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