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「質草」の値打ち

2020/11/19 6:57

 物(質草)を預かり、それに見合ったお金を貸す質屋だが、江戸時代には、形がないものでも質入れできたそうだ。上方落語の初代桂文枝がばくちで負けて金に困り、おはこの噺(はなし)「三十石」を質入れした。ひいきの客が受け戻すまで高座で演じることを封印したという▲そのまま引き取られず質流れ品になっていたらどうしたのだろう。ほかの落語家に売っても演じられたかどうか。真偽は定かではないが、名人と言われた噺家の芸に、それだけの値打ちがあったという逸話なのだろう▲預けてもいないのに、いつの間にか取られていた質草を受け戻す値段が11億円―。ゲーム大手の「カプコン」にサイバー攻撃を仕掛けた集団が大量の機密情報を入手したとして、金銭取引を迫っている。応じなければ盗んだ情報を公開するとも脅している▲ランサムウエアと呼ばれる暗号化ウイルスを企業のシステムに送り込んで感染させ、データを抜き取った上で使えなくする。ランサムは英語で「身代金」という意味。まさに情報を人質にした身代金の要求と言えよう▲データが無ければ業務に支障を来しかねない。質草のように流すわけにはいくまい。何とか手だてはないものか。

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