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就職内定率の急落 「氷河期」再来は避けよ

2020/11/20 6:33

 来春卒業する大学生の就職内定率が前年に比べ、大きく落ち込んでいる。10月1日時点で69・8%と、前年同期を7・0ポイント下回った。リーマン・ショック後の2009年に次ぐ下げ幅である。さらに、短大は13・5ポイント減、専修学校(専門課程)が14・9ポイント減という。いずれも過去最大の落ち込みを見せている。

 地域別に見ると中国・四国が59・7%である。北海道・東北とともに10ポイントを超す下落を見せており、より深刻だ。

 新型コロナウイルスの感染拡大が背景にある。業績の悪化した業界を中心に、採用意欲が低下しているようだ。昨年までの売り手市場が激変した。

 思い出されるのは90年代半ばから続いた「就職氷河期」だ。その再来とならぬよう、産官学で学生支援を急ぐ必要がある。

 学生はコロナ禍で例年と違う就職活動を強いられている上、採用を控える動きに不安感を強めているはずだ。すでに得ていた内定を取り消される学生も出ており、憂慮される。

 コロナの収束が見通せぬため早くも再来年春の採用を抑制する動きも見られる。この流れが今後、幅広い業界に広がり長期化する恐れもある。

 今のところ、コロナの影響が大きい航空や旅行、百貨店、飲食などの業界で、採用を控える動きが目立っている。

 航空業界では国際線を中心に業績の悪化したANAホールディングスと日本航空が、既に出した内定は取り消さないものの新卒採用活動を中止している。

 外食大手は雇用維持すら難しいという。さまざまな業種で解雇や雇い止めが増えてきてもいる。「新卒採用は数年間、厳しくなる」とみる専門家もいる。

 学生を支援する大学側もコロナ禍で苦慮しているようだ。授業がオンライン併用のため大学に来ない学生も多く、連絡を取れず、情報や支援が届かない。

 就職説明会やイベントの中止も相次いでおり、学生の孤立が心配される。

 このような状況を踏まえて政府は、卒業後3年以内の既卒者を新卒扱いとするよう、経済団体に要請している。新卒一括採用や春採用といった慣行を、今こそ改めるべきだ。

 というのも「氷河期」再来となれば、その代償は社会のあらゆる方面に及ぶからだ。

 バブル崩壊後の90年代半ばから約10年間の「氷河期」に卒業した人たちは「失われた世代」とも呼ばれ、正社員になれなかった人が少なくない。今も非正規雇用のまま、不安定な生活を強いられている。未婚率上昇や少子化の一因とされるほか、高齢化した際の公的支援や社会保障費の膨張も懸念される。

 企業でも今、中堅を担うべきこの世代の層が薄いため、事業にも影響が出ている。

 採用縮小には問題点が多いものの、好機とみる中小企業もある。昨年まで新卒採用もままならず人手不足に苦しむが、技術力や開発力が高く、成長の見込まれる企業は地方にも少なくない。学生は視野を広げ、選択肢と考えてみてはどうだろうか。

 先月、採用選考が解禁された高校生も厳しい状況になると予想される。

 政府が中心となって産学と連携し、採用状況の把握や分析を急ぎ、学生と企業のマッチングを支援しなければならない。 

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