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「我慢」の3連休 自助に頼ってどうする

2020/11/21 6:36

 新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからない。国内の新規感染者が2千人台に乗り、過去最多となった。今春の「第1波」から地方へのウイルス拡散が問題視される東京都では500人を上回り、警戒度を最高レベルに引き上げた。

 低温や低湿度をウイルスは好み、これから迎える冬場こそ感染シーズンの本番である。官民が総力を挙げて感染防止に臨まなければならないはずなのに、肝心の政府の無策が目立つ。

 日本医師会の中川俊男会長は先ごろ、もともと収束後の想定だった観光支援事業「Go To トラベル」が感染者急増の「きっかけになったことは間違いない」と指摘。軌道修正をしない政府の姿勢に業を煮やしたのか、「我慢の3連休としてほしい」と国民に呼び掛けた。

 対する菅義偉首相はきのうの国会答弁でも取り合わず、事業を続ける方針を繰り返した。重症者の数は今回、「第2波」のピーク時を既に超えている。医療現場の切迫感が伝わっていないのだろうか。

 私たち国民の側は一体、どちらのメッセージに耳を傾ければいいのだろう。これで、気の緩みが感染拡大の一因などといわれても合点がいかない。

 「第3波」と目される今、クラスター(感染者集団)は夜の街に限らず、学校や劇団、外国人コミュニティーなど多様になってきた。感染経路が不明なケースも増えている。無症状の陽性者などが知らぬ間に感染を広げているのかもしれない。

 都道府県と連携し、感染者急増の地域は「Go To トラベル」の対象から外すなど、柔軟な措置をためらうべきではない。除外措置を巡っては、赤羽一嘉国土交通相は「知事からそうした声がない」とする。責任ごと、地方に丸投げとは「自助」頼みがすぎないか。

 気掛かりな点は、他にもある。重症者の増加ペースが現在のままなら、緊急事態宣言の出た「第1波」を上回る恐れがあるという。専門家会合で先週、報告があった。

 北海道内では、重症者数が17人(19日現在)程度にもかかわらず、道医師会長は早くも「医療崩壊する可能性」を懸念している。それだけ窮迫し、余力のない証しなのだろう。

 地方はどこも似た事情を抱えている。全国知事会などは今週、公立・公的病院の「再編」議論について、コロナ禍が収束するまで凍結するよう、国に要望した。いま、国はむしろ、コロナ対応のマンパワーや病床の確保など、医療体制の拡充こそ急ぐべきである。

 東京都は感染状況の警戒度を最高レベルにする一方で、医療提供体制については2番目に深刻な警戒レベルに据え置いた。重症者の定義が国と違うからだといった指摘は根強く、都の医師会長もきのう「500人台が毎日続くと、かなり逼迫(ひっぱく)」と警鐘を鳴らしている。

 経済と感染防止の両立というスローガンが固定観念になってはいけない。感染爆発を招けば、あぶ蜂取らずだ。社会全体で取り組むため、政治のリーダーシップが今こそ求められる。

 感染予防のワクチンや治療薬が望まれるが、この冬はワクチンなしで乗り切らざるを得ない。その覚悟と知恵が私たちにも試されている。 

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