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「Go To」運用見直し 根拠を示し協力求めよ

2020/11/23

 菅義偉首相が観光支援事業「Go To トラベル」の運用見直しを表明した。感染拡大地域を目的地とする旅行の新規予約を一時停止する。飲食業界を支援する「Go To イート」は、食事券の新規発行停止などの検討を都道府県知事に要請するという。感染が急拡大している現状を考えれば、見直しは当然のことだろう。

 人が動けば、感染が広がることはかねて分かっていたはずである。既に専門家からは「Go To」事業の一時中断などを求める声が高まっていた。にもかかわらず、経済活動を重視する政府は腰が重く、先週末の国会でも継続する方針を繰り返し表明していた。

 驚くのは、感染がどの程度広がればブレーキをかけるといった具体的な目安の検討が今に至るまでなされていなかったことだ。緊急事態宣言などこれまでに取り組んだ感染防止対策の効果を科学的に検証し、その知見を踏まえて次の施策を進めるべきではないか。

 政府が旗を振っておきながら「Go To」の何が感染拡大につながったのか、何が問題だったのかが示されなければ、国民は不安になるばかりだ。しかも今回の見直し表明は、3連休で多くの人が既に動いているさなかである。決断のタイミングにも批判は免れまい。

 さらに理解に苦しむのが、見直しについて、いつから、どの地域を対象にするかといった肝心な点が何も示されていないことだ。西村康稔経済再生担当相はきのう「ここ何日かで方向性を示し、都道府県知事と連携して対応したい」と述べた。「生煮え」の状態で見直しを表明し、都道府県に判断を迫るのだとすれば無責任に過ぎよう。

 そもそもこの事業は、「感染拡大が収束し国民の不安が払拭(ふっしょく)された後」に開始することになっていた。だが政府は東京で感染が再拡大していたさなかの7月に前倒しして始め、「前のめり」だと批判された。

 政府が旗を振って全国に人の流れをつくる「Go To」事業の是非や、開始時期がよかったのかどうかについても、正しく検証されなければならない。

 感染は医療体制が脆弱(ぜいじゃく)な地方にも広がりつつある。重症化リスクの高い高齢者の感染も増えている。さらに広がれば持ちこたえられなくなる。政府の分科会は「今まで通りの対応では早晩、医療提供体制が逼迫(ひっぱく)する可能性が高い」と警鐘を鳴らす。コロナはもちろんそれ以外の病気の人の手術や入院にも支障が出かねない。国がまず旗を振るべきは、医療機関の態勢強化や検査態勢の拡充ではないか。

 経済対策が重要であることは国民も理解していよう。しかし感染が爆発すれば、経済活動どころではない。今は感染防止を優先すべき時である。

 分科会は先日の提言の冒頭で「個人の努力に頼るだけではなく、今までと比べより強い対応及び人々の心に届くメッセージを期待したい」と記している。政府は重く受け止めるべきだ。

 あいまいな発言で国民を振り回すのではない。何をどうすれば感染がどれだけ抑えられるといった具体的な根拠を示し、国民に協力を求めるべきだ。

 菅首相には今こそ自らの言葉で、感染押さえ込みに向けた決意を語ってほしい。 

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