【こちら編集局です】わが子入院、付き添い交代できず コロナで制限、小児科の現状は
新型コロナウイルスの流行が始まり、子どもの入院に付き添うのがしんどくなった―。無料通信アプリLINE(ライン)で悲痛な声が編集局に届いた。病院が感染予防のために付き添う家族の交代を制限し、長い間付きっきりになる親の負担が増している。流行の「第3波」にさらされる中、広島市内の小児科の現状を探った。
ラインで声を寄せた女性を訪ねた。市内の病院にこの夏、約2週間入院した乳児の母親だ。夫と付き添いを交代できず、1人で乗り切ったという。
昼間は治療の経過を見ながら、子どもを世話した。夜は子どもと同じベッドで横になり、何度も目覚めた。病院が子どもを預かってくれるのは1日に数十分。休むほどの時間はなく、自身の食事の購入やシャワーに走り回った。気を抜けない毎日は「疲れがどんどんたまり、連続勤務のようでした」と振り返る。
似た体験をした人は他にもいた。広島県内に住む40代女性は小学生の息子がこの秋、広島市内の別の病院に約10日間入院した際に付き添った。女性も交代できず、外出も禁止。「ふさぐ気持ちを切り替えられないのが苦しかった」と言う。
調べてみると、広島市内の主な総合病院の小児科6カ所のうち、4カ所で交代できない時期があった。
県立広島病院(広島市南区)は4〜10月下旬、一時期を除き交代を制限した。小児科の神野(じんの)和彦主任部長(61)によると、主に診る重い腎臓病の子どもは免疫を抑える薬を飲んでいて、感染症に弱い。新型コロナにかかったら重症化の危険がある。「小児病棟でクラスター(感染症集団)が発生して病院機能が止まることも防ぎたかった」と理解を求める。
一方、交代に積極的な病院もある。広島大病院(南区)と舟入市民病院(中区)は一貫して交代できる。付き添う親の体力を考慮した。きょうだいが一方の親に長く会えない事態も避ける狙いがあるという。
広島赤十字・原爆病院(同)は春は制限した交代を、7月からできるようにした。白血病を主に診る小児科では入院が約1年間に及ぶこともある。親の多大なストレスが、子どもの体調に悪影響だと考えたからだ。小児科の藤田直人部長(60)は「子どもは親のしんどさを敏感に感じ取って頭痛や吐き気を訴えることもある」と話す。ただ、「第3波」が押し寄せる中、「再び交代を制限せざるを得なくなる可能性もある。非常に心配している」と打ち明ける。
コロナ禍で負担が増す親に支援はできないのだろうか。子どもに食事を出すのなら、親にも提供してほしいという声もある。広島市内のある病院に聞くと「保険診療上、患者ではない親に食事は出せない」という答えが返ってきた。
親は耐えるしかないのだろうか。子どもの入院に付き添う家族を支えるNPO法人「キープ・ママ・スマイリング」(東京)の光原ゆき理事長(46)は「病院はまだ工夫できる」と話す。
先進例に挙げるのは親たちに朝昼晩の食事を1食832円で出す順天堂大医学部付属順天堂医院(東京)。患者用の一般食と同メニューで手間がかからない。代金は退院時に払う。
病院が子どもを預かる時間を延長すれば親は休息できるが、病院からは「コロナで経営が苦しく、保育士をさらに雇うのは難しい」との声も上がる。光原さんは「保育士を雇うのが難しいなら、NPO法人やボランティアの力を借りる方法もある」と提案する。
光原さんも長期の付き添いの経験者。「親には病院に要望する余力がない。病院の方から動き、親をしっかりケアして」と訴える。(治徳貴子)
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