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香港の民主派排除 孤立させてはならない

2020/11/24 6:04

 中国の全国人民代表大会(全人代)常務委員会が先ごろ、香港立法会(議会)の議員資格を剥奪できる制度を導入した。中国や香港政府に対する「忠誠心」が、その基準だという。香港政府は即日、民主派議員4人の資格を取り上げた。

 議会での審議も、司法の判断を仰ぐ手続きも経ない。行政の独断による議員資格の剥奪であり、投票で示された民意の否定だ。民主主義の根幹である選挙をないがしろにする暴挙にほかならず、決して許されない。

 中国や香港政府の意に沿わぬ言動を圧殺する「恐怖政治」ともいえよう。香港警察は実際、匿名による「密告」をそそのかす専用ホットラインを今月開設した。今年6月に中国が導入した国家安全維持法(国安法)を受けた施策である。

 米国、英国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの5カ国外相は先週、「強く懸念する」として、直ちに基準を見直し、議員を復帰させるよう、中国に求める共同声明を発表した。当然である。

 比べて、日本政府の姿勢は物足りない。加藤勝信官房長官が「重大な懸念を強めている」「関係国とも連携し、適切に対応したい」などとコメントしながら、共同声明には加わっていない。なぜ、歩調を合わせられなかったのだろうか。

 というのも、今回の民主派排除が国際公約を踏みにじる行為であるからだ。香港に「一国二制度」下の「高度の自治」を約束した1984年の中英共同宣言に反している。97年の香港返還後も50年間、資本主義を維持し、デモや集会の自由を認めると約束したはずではないか。

 欧米の批判に耳を貸さず、「内政問題だ」とする中国側の言い分は全く通らない。

 中国政府が強硬策に出たのは、香港市民の間で民主派の支持が根強いからだろう。昨年、中国への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案に反対する抗議デモは100万人規模に達した。民意を追い風に、昨年の区議会選で民主派の議席は8割を超えた。

 デモを弾圧する国安法の制定に続き、9月予定だった立法会選挙も1年延期し、民主派の余勢をそいだ。今回の強硬手段も同じ延長線上にある。

 また、民主主義を担う世界の盟主、米国が大統領選後も政権移行が進まないことも背景の一つだろう。中国が、その隙を突いた格好である。

 加えて、「一国二制度」による台湾統一をもくろむ習近平指導部の意向も働いていよう。だが、「二制度」より「一国」をあくまで優先させる今回のような姿勢は、到底受け入れられるはずもあるまい。

 全人代の強圧的な決定に抗議し、残りの民主派議員15人は辞表を出した。親中派ばかりとなる立法会にはチェック機能など期待できず、「追認機関」と成り下がるに違いない。

 香港では新型コロナウイルスの感染防止のため、デモは許可されていない。容赦なく畳み掛ける弾圧で、民主派の間に無力感が広がりつつあると聞く。

 民主主義という価値観を同じくする日米欧が足並みをそろえる必要がある。香港民主派の孤立を防ぐため、中国に対し、人権弾圧をやめるように断固として働き掛けるべきだ。 

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