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「桜を見る会」前夜祭 捜査尽くし疑惑立件を

2020/11/25 6:35

 安倍晋三前首相の後援会が主催した「桜を見る会」の前夜祭で、会場となったホテルが作成した明細書や領収書が存在していた。費用の一部を安倍氏側が補填(ほてん)したことが記されているという。

 補填額は5年間で800万円に上る可能性がある。記載が事実であれば、有権者への金品提供を禁じる公選法に違反する。政治団体の収支の記載を義務付ける政治資金規正法違反の疑いも強まったと言えよう。

 何より、安倍氏の国会答弁が虚偽だった可能性が出てきた。これまでは補填を真っ向から否定していた。ホテルの記載とは明らかに矛盾している。包み隠さず真実を明らかにしなければならない。

 東京地検特捜部が既に捜査に着手している。「安倍晋三後援会」代表である公設第1秘書や選挙区のある山口県内の支援者らを任意で事情聴取している。

 疑惑を裏付ける文書の存在が明らかになったのに、不問に付すことは許されまい。特捜部は捜査を尽くして全容を解明し、立件を目指すべきである。

 検察の姿勢も問われている。なぜ、首相退任後のタイミングで事情聴取に踏み切ったのか。官邸に近いとされた黒川弘務・元東京高検検事長がもし、検察トップの検事総長に就いていたら捜査はどうなっていたか。誰にも忖度(そんたく)していないか―。自らに向けられた国民の厳しい視線を忘れてはならない。

 前夜祭を巡っては全国の弁護士らが5月、前夜祭で有権者に飲食代を提供したなどとして公選法と政治資金規正法に違反した疑いで、安倍氏らに対する告発状を東京地検に出していた。

 前夜祭は2013年から19年までは、「桜を見る会」前日に都内のホテルで開かれ、支援者らが1人5千円の会費で参加していた。ホテルのホームページなどによると、飲食代は1人当たり最低1万1千円はするという。差額の数千円を誰かが負担しない限り、つじつまが合わないのではないか。

 安倍氏のこれまでの説明では5千円の会費はホテル側が設定し、明細書はホテル側から示されなかったという。「ホテルに提出を求めたらどうか」との野党からの指摘には、営業の秘密に関わるので応じないとも説明していた。

 事務所の関与についても、形式的なもので収入や支出は「一切ない」と否定し続けてきた。

 こうした説明は全て、うそだったのだろうか。

 安倍氏はきのう、捜査に全面的に協力していくとした上で「それ以上のことは今は差し控えたい」と述べた。

 「安倍氏には説明責任がある」。連立を組む公明党の山口那津男代表も、厳しい姿勢を示している。

 安倍氏が自ら招いた政治とカネの疑惑である。今までの説明は正しかったのか。口をつぐんでいたのでは、国民は納得するまい。政治家として、誠実に対応しなければならない。

 そもそも「桜を見る会」自体、選挙区の後援会関係者を多数招くなど、「私物化」しているとの批判があった。しかし昨年の招待者名簿が早々に廃棄され、実態の解明は止まったままだ。それも含めて、安倍氏は国会できちんと説明すべきである。与党の責任も重い。

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