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地銀再編支援 地域の再生あってこそ

2020/11/26 6:41

 政府と日銀は、地方銀行の再編を促すため、異例の資金支援策を相次いで打ち出した。

 日銀は、地銀などの経営統合や経費削減を後押しする新制度を設ける。政府は、合併に伴うシステム統合などの費用の一部を補助する制度を導入する方針を固めた。

 人口減少に伴う地域経済の衰退や超低金利政策の長期化で、地銀を取り巻く環境は厳しい。そこに新型コロナウイルス禍が追い打ちを掛けている。

 地銀の経営が揺らげば、苦境にある地域経済を支えられなくなる事態が起きかねない。再編によって規模を拡大し、経営基盤の強化につなげようとする施策の狙いは一定に理解できる。

 しかし地銀の数を減らしたからといって、経営の効率化に直結するとは限らない。規模を大きくしても、地方経済の縮小が続けば、いずれ立ち行かなくなるのは明らかだろう。

 まず地域経済をどう再生していくのかビジョンを明らかにした上で、実情に合った金融サービスの在り方を探る必要がある。拙速な再編は、地域にとってマイナスになりかねない。

 日銀が導入する新制度は、経営改革に取り組んだ地銀や信金に対し、日銀に預けている当座預金の金利を年0・1%上乗せする。2023年3月末までに経営統合や合併を決めたり、粗利益に対する経費の割合を3年間で4%以上減らしたりした金融機関が対象となる。

 全ての地銀と信金が対象になれば、年間400億〜500億円が支払われる。利息という形の事実上の補助金支給制度と言え、中央銀行が設けるのは極めて異例のことだ。

 菅義偉首相は「地銀は数が多すぎる」と繰り返し発言しており、地銀再編は政権の目玉政策でもある。今月27日には地銀の統合に独占禁止法を適用しない特例法も施行される。

 日銀には新制度を打ち出すことで、政府と連携して地銀を再編に向かわせる姿勢をアピールする狙いもあるのだろう。

 だが、上乗せ金利を支払えば、国庫への納付金は目減りする。実質的に国費を使った補助金制度になるが、国会での審議を経ないまま決定された。中央銀行の裁量を逸脱しているとの批判もある。

 日銀のマイナス金利政策の軌道修正とも受け取れる。新制度の適用を受ければ、マイナス金利の負担を回避できるからだ。マイナス金利の導入で悪化している地銀の収益環境を改善させる狙いもあるのだろう。

 これまでマイナス金利の見直しを否定してきた日銀にとっては大きな政策変更と言える。にもかかわらず、黒田東彦(はるひこ)総裁は衆院の委員会で「新制度は金融システムの安定が目的」と説明し、現行の金融緩和政策に影響しないと強調した。

 政策の整合性を問う声も出ている。少なくとも制度の決定過程を明らかにした上で、金融政策との関連や地銀だけを手厚く支援する補助金の必要性について総裁は説明責任を果たす必要がある。

 思惑通りに再編が進むかどうかは不透明だが、資金支援策を目当てに強引に再編や経営効率化を進めることは避けたい。コロナ後も地域経済を支えていく社会インフラとしての役割を肝に銘じるべきだ。 

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