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【こちら編集局です】歩行者もマナー再考を 「信号ない横断歩道、スマホ操作しながら渡る人多い」

2020/11/27 20:48
通勤・通学で多くの人が往来する平和大通り沿いの信号機のない横断歩道(広島市中区)

通勤・通学で多くの人が往来する平和大通り沿いの信号機のない横断歩道(広島市中区)

 ▽岡山や長野は「手上げ」運動

 信号機のない横断歩道で歩行者が渡ろうとしても、7割の車が止まらないという日本自動車連盟(JAF)の調査結果に対し、広島市中区の男性(76)から「スマートフォンを操作しながら歩く人も多い」と指摘する声が編集局に届いた。道交法は車に一時停止を求めるが、歩行者側のマナーにも再考の余地はある。他県では、子どもの頃に学んだ「手上げ」をアピールする運動が広がっている。

 人通りの多い中区小町の平和大通りと国道54号の白神社前交差点。横断歩道はあるが信号機はない南向きの左折レーンで平日の日中、車と歩行者を観察した。歩行者が途切れるすきを狙って横断歩道を通過する車が多いが、速度を落とさずに通り抜ける車もあった。「歩行者がいても、車は止まってくれない。子どももよく通る道なのに」。通勤で毎日通る西区の会社員山本晋司さん(56)は嘆いた。

 一方で、スマホをいじったり、耳にイヤホンをしたりして、左右を確認せずに横断歩道を渡る歩行者も目についた。危うさを感じたが、イヤホンを耳に渡っていた中区の高校3年女子生徒(18)は「音楽を聴くのにスマホを操作しながら渡っちゃうことが多い。友達も同じ。これまで横断歩道で怖い思いをしたことはないし」と素っ気ない。

 JAFは、信号機のない横断歩道を歩行者が渡ろうとした時に車が一時停止する割合を各都道府県で調査。2018年に広島が1・0%で全国ワースト2となった。その後、県警が取り締まりや啓発に力を入れる中、19年に17・5%、20年は27・9%に改善。全国平均(21・3%)を上回り、12位に浮上したが、7割の車が止まらない現状に県警の危機感は強い。歩行者の危険な行為をどうなくしていくかにも頭を悩ませる。

 5年連続1位の長野(20年72・4%)にヒントがないかと思い、長野県警交通企画課に電話で聞いてみた。担当者は「長野では幼少期から横断歩道を渡った後、ドライバーにおじぎする習慣がある」と説明。データの裏付けはないが、この習慣が県民に根付き、運転する側になっても一時停止する好循環が生まれていると考えているそうだ。

 長野県警は今秋、歩行者が渡る前に手を上げ、車に意思表示する運動を始めた。路上で実態調査をした地元の高校生が「手を上げた場合、車が一時停止する割合が2・5倍になる」と県警に提案したのがきっかけだった。

 「手上げ」運動は各地で広がる。岡山県警が今月から始めたほか、大阪府警は「ハンドサイン運動」として周知を図る。京都府警も、幼少期から「手上げ教育」を浸透させる方策の検討を急いでいる。

 「手上げ」について意外な事実も分かった。国家公安委員会が1972年に交通ルールをまとめた「教則」には元々、横断歩道を渡る際に歩行者は「手を上げて合図する」と書かれていたが、78年の改正でこの文言は削除。「車が近づいている時は通り過ぎるまで待つ」に変わっている。

 広島県警交通企画課に尋ねると「どっちが正しいとは言えない」と戸惑い気味だが、村上友康管理官は他県警の動向を念頭に「歩行者の意思表示や正しい横断方法の意識付けのさらなる取り組みを検討中」とする。

 県内では今年、10月末時点で信号機のない横断歩道で3人の歩行者が車にはねられて死亡し、50人がけがをした。12月は例年、事故が増える。歩行者として運転手として一人一人が見つめ直したい。(石下奈海、山田英和)

 <クリック>横断歩道を巡る道交法の規定 道交法38条は、前方の横断歩道を横断するか、しようとする歩行者や自転車がいる場合には車両は一時停止し、歩行者の通行を妨げてはならないと定める。違反車は「横断歩行者妨害」として摘発対象となり、県警は今年、10月末までに前年比約1・6倍の2741件を摘発した。行政処分の違反点は2点で、反則金は大型車1万2千円、普通車9千円など。罰則は3月以下の懲役または5万円以下の罰金。

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