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選択的夫婦別姓 導入への議論進めたい

2020/11/30 6:00

 夫婦が望めばそれぞれが結婚前の姓を名乗ることも認める選択的夫婦別姓について、導入を求める機運が再燃してきた。働く女性が増え、家族の在り方も多様化している。時代に合わせた議論を進めてもらいたい。

 政府の法制審議会が導入を含めた法改正を答申して四半世紀近くになる。伝統的家族観を重んじる保守層の反対が強く、これまでは実現できなかった。

 しかし今回は、橋本聖子・男女共同参画担当相が前向きな姿勢を示している。年内策定を予定する、来年度からの男女共同参画基本計画に、実現に向けて検討を進める方針を盛り込む考えを繰り返し述べている。

 政府が今月開いた男女共同参画会議で、有識者会議の佐藤博樹会長が選択的夫婦別姓について「もう一段踏み込んだ議論を期待する」と菅義偉首相に要請した。首相自身もかつて賛成を表明していた。今国会でも「政治家として、そうしたことを申し上げてきた責任がある」と強調している。

 国民の多くも受け入れようとしているようだ。60歳未満の成人男女の70・6%が理解を示した―。早稲田大教授と市民団体「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」が10月にインターネット調査して、全国7千人の回答を得た。自分は夫婦同姓を望み「他の夫婦も同姓であるべきだ」と、同姓に固執する回答は14・4%にとどまった。同じ姓でないと家族の一体感が薄れる―といった意見はさほど広がってはいないのではないか。

 夫婦同姓は、民法750条で結婚後にどちらかの姓を名乗るよう規定されている。実際に姓を変える96%が女性のため、時代遅れの女性差別との批判がやまない。「姓を変えることで今までの自分が失われるようだ」といった不満の声が漏れる。仕事への支障などを理由に、姓を変えない「事実婚」を選ぶ人も少なくない。

 民法の規定は差別的だとして、政府は国連女性差別撤廃委員会から再三廃止を求められてきた。しかし腰は重かった。

 この規定が憲法違反かどうかを巡る訴訟の上告審判決で、最高裁は2015年、合憲との初判断を示したことも影響していよう。一方で、裁判官15人のうち女性判事3人全員を含む5人が「違憲」と判断した。しかも判決は夫婦別姓の制度を議論するよう国会に促している。

 最高裁の判決後も、選択的夫婦別姓に絡む国家賠償請求訴訟が広島地裁などで起こされ、係争中だ。広島高裁は9月、「合憲」との判断を示して請求を退けた一審の広島地裁判決を支持した。しかし最高裁判決以降、内閣府調査で選択的夫婦別姓制度への賛成が反対を上回り、全国の地方議会でも制度導入の審議を求める意見書が出ていると指摘。「謙虚に耳を傾け、真摯(しんし)な議論が期待される」と国会に注文を付けた。議論せず放置し続けることはもう許されまい。

 制度の導入や議論を求める意見書を出した地方議会は、全国陳情アクションのまとめでは近年増えている。これまで広島や三原、総社、倉敷の各市議会など160件近くに上るという。

 法務省によると、夫婦同姓を義務化している国は日本だけ。子どもの姓はどうするか―など詰めるべき点もあるが、導入に向けた議論は待ったなしだ。

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