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師走ウィズコロナ

2020/12/1 6:42

 <何にこの師走の市にゆく烏(からす)>。松尾芭蕉の晩年の1句は、年の瀬の人混みに分け入って世俗にまみれたいという、抑えがたい己の欲求を烏に託して詠んだとされる。もっとも「我慢の3週間」の今なら、3密を好む姿を責め立てる句にも読めてくる▲朝の冷え込みとともに師走が始まった。一年を振り返りつつ、「忙しい」とぼやいて走り回る。誰もが「先生」になるはずなのに、今年はどうも勝手が違う。感染防止のためにはむしろ、立ち止まった方がよさそうだ▲いや、じっとしていられるだろうか。ウイルスに苦しんだ年だからこそ、年忘れの会を開くすべを考えたくなりそう。いつも以上に義理を欠いた知人や友人に会って、お歳暮やクリスマスプレゼントを直接渡したいし…▲もちろん医療関係の人たちに、さらなる激走を強いるわけにはいくまい。片や飲食店や旅行関係の人はもっと走り込みたいだろう。さまざまな思いが駆け巡る「思走(しわす)」とでも呼ぶべきか▲カラスは「神様の使い」であり、あくせく動き回る人間たちを空から見下ろしている―。芭蕉の句にはそんな解釈もあるようだ。コロナに立ち向かい、翻弄(ほんろう)される私たちの姿は、どう映るのだろう。 

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