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「強制不妊」再び違憲 なぜ救済に踏み込まぬ

2020/12/2 6:37

 知的障害や遺伝性疾患などの患者に不妊手術を強制的に施すことを認めていた旧優生保護法(1948〜96年)は憲法に違反する―。司法が再び、そう判断した。当然である。

 「不良な子孫の出生防止」との目的を掲げた旧法の下で不妊手術を強いられたのは憲法違反だとして、国に損害賠償を求めた訴訟の大阪地裁判決である。

 「極めて非人道的かつ差別的だ」と旧法を断罪。幸福追求権を定めた憲法13条に加え、法の下の平等を規定した14条に関しても、違反だとした。

 同様の訴訟は全国9地裁・支部で起こされ、判決が出るのは3件目。旧法を違憲だと判断したのは、昨年5月の仙台地裁判決に続き、2例目となった。

 ただ肝心の賠償請求については、仙台地裁や、旧法の違憲性には言及しなかった今年6月の東京地裁と同様、棄却した。3件とも不法行為から20年過ぎると、賠償請求権が消えるという民法の「除斥期間」、いわば時の壁を理由にしている。

 国は手術から数十年過ぎており、除斥期間の規定が適用されると主張していた。判決はそれを認め、訴えを棄却した。あまりにも機械的すぎ、血の通っていない判断である。

 憲法違反としながら、時の壁については国の主張をうのみにしたのでは、一貫性にも欠ける。著しく正義、公平の理念に反しているとして、20年を越えても除斥期間を適用しなかった最高裁判決もある。

 今回は、子を産み育てるかどうかの意思決定の自由や、身体を傷つけられない自由を侵害し、合理的根拠のない差別的取り扱いで「明らかに違憲」と判決は断じている。「手術で被った精神的、身体的被害は甚大」「請求権が失われたことを受け入れがたいとする心情は理解できる」とも述べている。

 そこまで指摘しながら、なぜ救済の必要性には踏み込まなかったのか。疑問が拭えない。

 「提訴できない状況を国が意図的につくり出したとも認められない」との判断だという。誤った法律の犠牲者には、国の方から救済の手を差し伸べるべきではないのか。

 さらに問題なのは、救済のための立法などを実現させてこなかった政府や国会の不作為についても「違法とはいえない」などと判断したことだ。

 旧法に基づき、全国で少なくとも約2万5千人が不妊手術を受けた。うち1万6500人は強制的だったとみられている。しかも政府は当時、身体拘束や麻酔使用、だました上での手術さえ容認していたのだ。

 国会は昨年ようやく、被害者を救済する法律を成立させた。欧州各国に比べて遅すぎる上、内容も不十分だ。法案の国会審議は、被害者による意見陳述機会のない「当事者不在」のまま進められた。条文には、旧法の違憲性や国の責任は明記されなかった。

 今回の判決で言う「極めて非人道的かつ差別的」な事態を招き、長年放置してきたのは一体誰か。その視点を判決は欠いている。行政府や立法府を免責し、司法の役割を積極的に果たそうとはしていない。政府や国会に不作為があれば、厳しく問い、改善を促してこそ、国民の期待にも応えられよう。三権分立も一層機能するはずだ。

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