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GoTo東京一部自粛 「除外」なぜ打ち出せぬ

2020/12/3 7:19

 観光支援事業「Go To トラベル」による東京発着の旅行について、65歳以上の高齢者や基礎疾患のある人を対象に17日まで利用自粛を呼び掛けるという。そんな拍子抜けのする対策で、菅義偉首相と東京都の小池百合子知事が合意した。

 新型コロナウイルス感染者の急増を受けて、「東京除外」を求める声が強まっていたにもかかわらず、限定的な自粛要請に落ち着いた。

 背景には、感染拡大防止と経済回復の両立を掲げる首相と、政府の責任で判断すべきだとする知事の対立があるようだ。

 東京除外をどちらも自分からは切り出したくないのだろう。いわば意地の張り合いによって国民の命と暮らしが危機にさらされることなどあってはならない。抜本的対策を取らなければ事態の悪化を招きかねない。

 今回の自粛要請で感染拡大をどれほど抑えられるか。効果は限定的に違いない。高齢者や基礎疾患のある人は日頃から感染に注意し、自粛していると、専門家も指摘する。

 高齢者は重症化リスクが高いが最近は家庭内感染が目立つ。「特に重症者の増大を抑える観点から自粛要請で合意した」という小池知事の説明には疑問符が付く。感染の多い若い世代には危機感が伝わらない懸念もある。感染急拡大の今、取るべき対策としては手ぬるい印象だ。

 GoTo事業を推進してきた首相は見直し対象を広げたくないのだろう。「事業が感染拡大の主因となった証拠はない」と国会でも繰り返している。

 しかし政府の新型コロナ感染症対策分科会は、感染状況が2番目に深刻なステージ3に相当する地域ではGoToトラベルの一時停止を提言。東京23区もステージ3に相当するとした。さらに医療関係者からも「医療現場は逼迫(ひっぱく)している」と悲痛な声が上がっている。

 もちろん、経済を回すことが重要なのは分かる。

 GoTo事業で旅行業界や観光業界では一息ついているのは間違いない。地方経済にも効果をもたらしている。飲食店などは「イート事業」もあって客が戻り、助かっているようだ。

 日本経済の中心である東京がGoToトラベルから除外となれば、地方にも相当なダメージが及ぶのは間違いない。

 とはいえ「勝負の3週間」として政府も広く感染拡大の対策を呼び掛けている。やはり今、一時的に東京を除外すべきではないか。「除外」の影響を受ける企業や店には給付金で対応するなどしてでも、まずは感染拡大を抑え込むという覚悟が求められる。

 今回の自粛要請に応じて高齢者らが旅行を取りやめる場合、キャンセル料などの手続きも煩雑となって、業者に負担が掛かることも懸念される。

 GoTo事業は、そもそも感染状況が落ち着いている時期に実施すべき性格のものだった。ところが感染状況によって、事業を停止する基準さえ決めずにスタートさせたため今、対策が後手後手に回っている。

 国内の感染者はおととい累計15万人を超えた。全国の死者、重症者はいずれも1日当たりで過去最多を更新した。状況を重く受けとめ、根本的な対策を打ち出して、国民に明確なメッセージを示すべきときだ。 

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