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政治とカネ 国会で究明しないのか

2020/12/4 6:01

 「桜を見る会」前日に安倍晋三前首相の後援会が主催した夕食会を巡り、東京地検特捜部が安倍氏の公設第1秘書を立件する方針を固めた。安倍氏にも事情聴取を要請した。

 安倍前政権を巡っては、吉川貴盛衆院議員が農林水産相当時、鶏卵生産業者から現金提供を受けていた疑惑も浮上し、政治とカネを巡る問題が相次いでいる。にもかかわらず政府、与党は、臨時国会を延長しない方針である。なぜ会期を延長し、当事者に説明を求めないのだろうか。

 夕食会では、安倍氏側が費用の不足分として2019年までの5年間で約900万円を補填(ほてん)していた疑いがもたれている。安倍氏はこれまで「事務所が補填した事実は全くない」と国会で強弁してきたが、安倍氏周辺は費用の補填を認めている。

 事実ならば政治資金規正法や公職選法に違反する。その上、安倍氏は首相として、国会で虚偽答弁を繰り返していたことになる。由々しき事態だ。

 安倍氏はそれまで自らの政権下でカネを巡る問題が起きるたび「一人一人の政治家が襟を正すべきだ」としてきた。ならば自らも襟を正し、国会で疑惑について説明すべきだ。まさか秘書から報告を受けていなかったと逃げるつもりではあるまい。

 官房長官として安倍前政権を支え、答弁を追認してきた菅義偉首相の責任も重い。菅首相は「事実が違った場合は当然、私にも責任がある」としながら、野党が求める安倍氏の国会招致は「国会で決めることだ」と突き放す。責任の重さをどう考えているのだろう。

 もう一つ、鶏卵生産大手「アキタフーズ」(福山市)グループ元代表から、吉川氏が現職大臣だった時に現金を受け取っていたとされる疑惑もある。

 鶏卵業界は、鶏の飼育を巡る国際規制が養鶏業者の負担にならないよう農水省に働きかけるなどしてきたとされる。吉川氏は受領を否定しているが、元代表は渡したことを認めている。業界への利益誘導を疑われかねない重大な問題だ。

 ところが吉川氏は急きょ入院してしまった。文書でコメントし、「(捜査)当局から説明を求められれば、入院治療中だが誠実に対応する」としている。捜査への協力はもちろんだが、まずは自ら国民に説明すべきである。

 元代表と吉川氏との交遊は、昨年7月の参院選広島選挙区の大規模買収事件で、公選法違反の罪に問われている元法相の河井克行被告の紹介で始まったという。安倍前政権下では、河井事件のほかにも、カジノを含む統合型リゾート(IR)事業をめぐる汚職事件など、政権に近いところで政治とカネの問題が絶えない。金権政治がはびこっている証しではないか。

 疑惑に加え、新型コロナウイルスの感染拡大も止まらない。コロナ対応も含め、課題に取り組むのが国会の役割のはずだ。

 衆院の政治倫理綱領は「疑惑を持たれた場合は自ら真摯(しんし)な態度で疑惑を解明し、責任を明らかにするよう努めなければならない」と明記している。

 このままでは、国民の政治や行政への信頼が地に落ちてしまう。金まみれの政治と決別するためにも、国会会期を延長し、疑惑を究明すべきだ。

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