コラム・連載・特集

75歳以上医療費負担 異論集約、政治の役割だ

2020/12/5 6:41

 75歳以上の医療費窓口負担を2割に引き上げる政府・与党の方針が、大筋で固まろうとしている。現役世代の負担を少しでも軽くしようという制度改革は待ったなしだと言えよう。

 しかしながら実施時期は2022年秋以降に先送りされつつあるようだ。新型コロナウイルスの終息を見極めたいとの判断なら一考に値するが、与党が今後の選挙への影響をにらんで判断したとすれば、問題の先送りと言われても仕方がない。菅義偉首相の指導力も問われよう。

 きのうの与党内の協議は、対象者の所得の線引きが最大の焦点だった。政府・自民党は2割負担となる対象者を年金収入年間170万円以上としたいのに対し、公明党は240万円以上とするよう主張してきた。

 政府・自民党案であれば、新たな2割負担の対象は約520万人になり、現役世代の負担軽減額は年1220億円と算定されている。一方、公明党案であれば、対象は約200万人に減少し、負担軽減額は年470億円にとどまることになる。

 この線引きに関する与党内の協議はきのうも続いたが、意見が一致を見ず、予定されていた全世代型社会保障検討会議は延期された。引き上げの趣旨を念頭に置いて、早急に結論を取りまとめてもらいたい。

 75歳以上の高齢者の医療費は税金のほか、健康保険組合連合会(健保連)や全国健康保険協会(協会けんぽ)が拠出する支援金で大半が賄われる。新型コロナウイルスの流行によって企業業績が低迷し、従業員の賃金が引き下げられる中、両保険団体の収支も悪化に向かう。

 その一方で「団塊の世代」が75歳以上になり始める2022年度が迫っている。窓口負担が現状のままだと、現役世代が負担する75歳以上の医療費は20年度の6兆8千億円が、25年度には8兆2千億円に膨らむという厚生労働省の試算もある。

 健保連と協会けんぽの両保険団体に経団連、日本商工会議所、連合を加えた5団体は先頃、田村憲久厚労相に対し「給付と負担の見直し」を含む医療保険制度改革を、遅くとも22年度までに確実に実行するよう要望した。第一に求めたのが75歳以上の窓口負担の2割への引き上げであり、「健康な高齢者には社会保障を支える側に加わっていただく」としている。

 現役世代が疲弊すれば、日本が堅持してきた「国民皆保険制度」も守ることができまい。現役世代だけに偏しないで、負担を幅広い世代で分かち合うしかないのではないだろうか。世代によって異なる考え方をいかに集約するのか。政治家が本来、果たすべき役割でもあろう。

 2割負担への引き上げに当たっては、2年間の激変緩和措置も検討されているようだ。外来受診の負担が1割の時に比べ、最大月4500円の増加に抑えられるよう上限を設ける案が、厚労省から示されている。

 また、コロナの流行に伴って起きている高齢者の「受診控え」に拍車が掛かるとの意見もあろう。受診控えの問題は個別に解決策を探ってほしい。

 コロナ流行のさなかの見直しの実施に慎重論を唱える意見も、自民党内にあるようだ。引き続き調整が必要な箇所は多々あろうが、大きな流れは止めてはなるまい。 

  • 前の記事へ
  • 次の記事へ

 あなたにおすすめの記事

社説の最新記事
一覧