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大飯原発許可取り消し 判決の重み受け止めよ

2020/12/6 7:02

 地震列島の日本に点在する原発の安全性は確保できているのか。行司役である原子力規制委員会の審議過程に「看過しがたい過誤、欠落がある」と指摘する司法判断が示された。

 関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)に対し国が与えた設置許可を巡る訴訟で、大阪地裁がおととい出した判決である。福井など11府県の住民ら約130人の訴え通り、許可を取り消した。

 東京電力福島第1原発事故の後、運転差し止めを命じた判決は全国で幾つか出された。しかし事故を受けて強化された新たな規制基準に沿った設置許可を取り消す判断は初めてである。安全審査自体に「ノー」を突き付けた意味は重い。規制委はもちろん、国や電力会社は真剣に受け止めなければならない。

 最大の争点は、耐震設計の目安となる最大規模の揺れ(基準地震動)の値や、これを基に設置を許可した規制委の判断が妥当かどうか、だった。

 関西電力は、基準地震動の最大加速度を856ガルと設定。それを規制委は適正と評価した。一方の原告は、基準地震動の算出過程で用いた過去の地震データには、平均値を大きく上回ったり下回ったりしたものなど「ばらつき」があるのに、考慮されていないと批判していた。

 判決は、基準地震動の妥当性を確認するため規制委が定めた「審査ガイド」に「ばらつき」も考慮する必要があるとの条項が、福島原発事故後に追加されたことに言及。その上で、ばらつきに絡んで、規制委が平均値への数値上乗せが必要かどうか検討せずに許可を出したとして「審査すべき点を審査していないので違法だ」と判断した。安全性をチェックすべき役割を果たしているのか懸念される。

 そもそも電力会社が算定し、政府の規制組織が「お墨付き」を与える基準地震動は、どれほど信頼できるのか。というのも2007年の新潟県中越沖地震で、東電柏崎刈羽原発を襲った揺れは、想定されていた基準地震動を大きく上回ったからだ。地震後、東電は最大2280ガルまで従来の5倍に引き上げた。

 柏崎刈羽原発だけではない。東北電力女川原発(宮城県)と北陸電力志賀原発(石川県)も想定を超す揺れに見舞われたことがある。発生後に「想定外」と弁解しても遅すぎるし、許されまい。規制委は、耐震性について最初から相当厳しいハードルを課すべきではないか。

 「自覚」が足りないのは関西電力も同じかもしれない。昨年「原発マネー」の還流疑惑が発覚。原発の立地する福井県高浜町の元助役から関西電力の役員らが巨額の金品を受け取っていた。今年は役員報酬の補填(ほてん)問題も明らかになった。消費者には電気料金引き上げで負担を強いながら減額した報酬をひそかに補填していたという。こんな役員のいる会社に、危険な放射性物質を扱う原発を運転させても大丈夫か疑問だ。信頼回復は簡単ではあるまい。

 福島第1原発事故から間もなく10年になる。事故の記憶が薄れつつある中、再稼働を推進する政府の姿勢もあって、安全性が軽視されてはいないか。政府からの独立性強化など規制委の在り方も含め、安全確保策の総点検が必要だ。新たな「安全神話」を生まないためにも。

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