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広島県で鳥インフル 拡大阻止に警戒強めよ

2020/12/8 6:43

 三原市内の養鶏場で高病原性鳥インフルエンザが発生した。同じ瀬戸内海沿岸の香川県内では先月初めから、立て続けに10例の感染が確認されていた。

 鳥インフルの感染は2004年1月、山口県阿東町(現山口市)の養鶏場で見つかったのが国内では79年ぶりのことだった。以降、広島県内では1例も起きていなかった。それだけに県内の養鶏業界や行政にとっては衝撃だろう。

 農林水産省の指針に基づき、広島県は鶏の殺処分、関連施設の消毒、人や車の移動制限といった防疫措置の初動態勢に入っている。緊張感と冷静さを保ちながら、基本に沿ったまん延防止策の徹底が望まれる。

 今シーズンの感染は、これで6県目となる。香川を振り出しに福岡、兵庫、宮崎、奈良、広島と西日本に集中している。殺処分の対象となった鶏の数は既に計220万羽を超え、04年以降で最も多くなった。

 鳥インフルのウイルスは、渡り鳥によって海外からも持ち込まれるとされる。衣服や車のタイヤにも付着し、人間の移動や社会活動ではびこる恐れがある。また、野鳥のふんからも感染するため、付着したネズミやイタチなどの小動物も「運び役」となり得る。

 つまり感染リスクはどこも抱えている。だが、農水省がこれまで派遣した疫学調査チームによれば、人や車の動線が交差していたり、鶏舎ごとに長靴を履き替えていなかったり、衛生管理の甘さが目に付くらしい。

 小動物や野鳥が出没した形跡もある。施設に隙間がないかどうかのチェックや防鳥ネットの設置をいま一度、徹底したい。

 4年前の疫学調査では、感染した農場の近くに水辺が目立つ点を指摘していた。ため池の数が都道府県別で最も多い兵庫、2位広島、3位香川のいずれも今回、感染地となっている。季節を限って、ため池の水を抜くとか、忌避テープを張るとか、野鳥を寄せ付けない工夫も検討する余地がある。

 鳥インフルに感染した鶏肉や卵が市中に出回ることはない。口にした人にウイルスが感染したという報告もない。ただし、発生が繰り返されるうちに人への感染や、揚げ句は人から人への感染をもたらす新型ウイルスに変異しないとも限らない。何としても、感染拡大を食い止めなければなるまい。

 家畜伝染病ではおととし、国内で26年ぶりの確認となった「豚熱」(CSF、豚コレラ)の感染も終息していない。東海や関東、三重、沖縄などの9県で発生した上、感染源と目される野生イノシシの陽性事例は22都府県で見つかっている。

 パンデミック(世界的大流行)を今年引き起こした新型コロナウイルスも、野生動物由来の感染症とみられている。

 自然界からの「警告」と受け止めるべきではないか。国連も今年9月、生物多様性を巡る報告書で新たな視点を打ち出した。人と家畜、野生動物を一体として健全に保つ「ワンヘルス(一つの健康)」である。生態系の健全化なくして感染症予防なし、という意味合いだろう。

 まずは警戒を強め、目の前の感染封じ込めに力を注ぎたい。同時に長い目で持続可能な畜産を共に考えていくことを、私たち消費者も忘れたくはない。 

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