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追加経済対策 規模ありきでは危うい

2020/12/9 6:37

 政府はきのう、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた追加経済対策を閣議決定した。

 対策の事業規模は民間投資を含めて73兆6千億円ほどに上るという。2020年度の第3次補正予算案と21年度の当初予算案を一体で編成する「15カ月予算」として、計30兆6千億円の歳出を計上する。

 新型コロナの感染が再び拡大しており、「第3波」への警戒感が高まっている。国民の命や暮らしを守る対策に万全を期すことは当然である。

 ただ与党からは次期衆院選を意識したのか、予算規模の拡大を求める圧力が強まり、金額の積み増しを優先したように映る。規模ありきでは、財政規律が働きにくく、予算の無駄遣いにつながりかねない。

 感染や国民生活の状況に即した必要かつ有効な施策を打ち出していくためにも、中身の厳しい精査が求められる。

 経済対策は、コロナ感染拡大防止に加え、コロナ後を見据えた経済構造の転換と、防災・減災のための国土強靱(きょうじん)化を3本柱に掲げる。

 コロナ対策では、とりわけ医療と介護現場の崩壊を防ぐことが重要だ。低所得の子育て世帯など生活困窮層への支援も継続する必要がある。

 医療機関向けの「緊急包括支援交付金」を増額し、病床の確保を支援する。低所得のひとり親などに対し、5万円の給付金を年内に再支給するほか、雇用調整助成金の特例も現行水準のまま来年2月まで延ばす。

 こうした当面の対策に使うのは事業規模ベースで6兆円ほどだ。一方で、コロナ後の経済構造の転換などには51兆7千億円も充てる。

 デジタル化や脱炭素社会に向けたグリーン戦略を名目に、複数年度にわたる大型の基金を創設することなどを盛り込む。いずれも菅義偉首相が看板に掲げる重要政策であるが、緊急性が高いとは言い難い。

 もちろん将来の成長に向けた布石も大切だが、今わざわざ補正予算を組んでまで取り組むべき政策だろうか。その必要性と優先度は厳しく問われなければならない。デジタル化や環境に名を借りたばらまきにならないよう、使途の監視と効果の検証が欠かせない。

 国土強靱化につなげる防災・減災事業には21年度からの5年間で15兆円が積まれることになった。公共工事の経済効果は限定的とされ、コロナ禍との関係性も薄い。運用に目を光らせ、経済対策にかこつけた便乗事業は排除しなければならない。

 コロナ対策では巨額な財政支出が続いている。1次補正で26兆円弱、2次補正で32兆円弱の歳出を追加してきた。新規国債の発行額は100兆円を超え、空前の規模に達する見通しだ。

 一方で税収の見通しはコロナ禍の影響で数兆円規模の下振れが想定される。厳しい財政運営は必至で、不要不急の事業は避けなければならない。

 コロナ禍の影響で仕事を失った人は先月で7万人を超えた。希望退職の募集に踏み切る企業も目立つようになった。自助努力で乗り切るには限界があり、今こそ公助が求められる。

 政策の中身を吟味し、事業の厳選は欠かせない。コロナ禍に苦しむ人々や企業に真に必要な支援に重点配分すべきだ。 

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