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ワクチン接種スタート 安全性、慎重に見極めを

2020/12/10 6:53

 新型コロナウイルス感染症のワクチンの接種が英国で始まった。米製薬大手のファイザーなどが共同開発したものだ。

 ワクチン実用化は日米欧では初めてである。感染拡大が収まらず大勢の死者を出していることから、その効果に大きな期待が寄せられている一方で、安全性を懸念する声も根強い。

 というのも急ごしらえのワクチンであるためだ。どんな副作用がどの程度発生するのか。気掛かりな点が多い。

 同社製のワクチンは来年上半期、日本に1億2千万回分(6千万人分)が供給されることで日本政府と基本合意している。臨床試験(治験)や審査を経て3月にも国内での接種が始まる見込みだ。

 政府は先行して接種を始める国の情報を注視し、安全性を見極めるなど使用には慎重な姿勢を取るべきだ。

 英国がワクチンの大規模接種を始めた背景には、欧州最多の6万人以上の死者を出していることもあるのだろう。自国の製薬会社アストラゼネカも治験を進めるが、ファイザーなどのワクチンの緊急使用を承認した。

 Vデー。ワクチンの頭文字を戦勝記念日になぞらえ、英国の保健相は接種開始の日をそう呼んだ。まずは80歳以上の高齢者や介護施設職員、医療関係者らを優先して接種を始めた。

 ファイザーのワクチンは21日間空けて2度接種するが、取り扱いが難しい。マイナス70度での超低温保管が必要なため、まずは設備の整った大規模病院でスタート。今後、各地の介護施設に運び、接種する際も慎重さが求められよう。

 年内に数百万人が接種を受けることが期待されると保健相は述べたが、楽観視はできない。介護施設入居者や医療従事者らだけで670万人いる。数カ月かかるという見通しがある。

 「短距離走ではなく、マラソンだ」。保健当局の警告通り、すぐにコロナ禍が収束するわけではない。引き続き感染予防策を徹底せねばなるまい。

 英国には国民の名前や連絡先を集約した医療制度がある。それに基づきワクチン接種の連絡が入り、予約する流れという。

 接種がスムーズに進むような仕組みを、日本でも準備しておく必要があるのではないか。

 ワクチンに期待する声は高いようだ。日本を含む15か国で行われた調査によると、「接種に同意する」と答えた人は平均で7割だった。

 一方、3割の人が接種に同意しない。その理由は「副作用の懸念」「治験のスピードが速すぎる」が多かった。

 英国では若年層が接種に消極的との調査結果があり、偽情報で「陰謀論」を広め、混乱を招く者もいるという。

 新技術を使って開発されるワクチンも多く、安全面に不安は残る。効果が持続する期間もよく分かってはいない。人々が抱く不安は、治験や承認を急いだ「ツケ」とも言える。

 ロシアは治験が未完了というのに、自国で開発したワクチンの接種を始めた。安心して接種を受けるには信頼性が欠かせまい。各国政府や企業は積極的に情報を開示する義務がある。

 コロナ禍の終わりの始まり―との声も聞こえるが、終わりはまだ遠い。警戒を緩めず、地道な対策を続けねばならない。 

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