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医療崩壊の危機 GoTo早く停止せよ

2020/12/11 6:37

 取り返しのつかない事態を招いているのではないか。新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかけられず、全国の新規感染者数はきのう、今までで最も多くなった。広島市や広島県ではおととい過去最多となり、感染拡大による医療の逼迫(ひっぱく)は足元に迫ってきている。

 深刻なのは北海道旭川市や大阪市などだ。病院でのクラスター(感染者集団)発生や重症者の増加で、医療現場の人手や病床が不足して医療が逼迫、崩壊の恐れが現実味を帯びている。旭川市は自衛隊に看護師の派遣を求める事態にまで陥った。

 医療現場のスタッフには身体的・精神的負担が重くのしかかっている。過酷な待遇が改善されないなども加わって、離職者も相次いでいるという。このままでは、通常の医療にしわ寄せが及びかねない。

 政府は、あらゆる手だてを尽くすべきだ。まずは観光支援事業「Go To トラベル」を停止しなければならない。

 専門家の勧告もある。感染症対策分科会の尾身茂会長はおととい国会で、札幌、大阪両市や東京都の一部などの感染急拡大地域では、「トラベル」を含め「人の動きや接触を控えるべきだ」と強調した。「不要不急の外出」でもあり、一時停止が必要というのだ。こうした提言を謙虚に受け止め、政府はすぐ実行に移す必要がある。

 尾身氏はまた、「感染を下火にしてからしっかりやった方が経済的にも良いし、国民の理解を得られるのではないか」とも述べている。うなずける指摘だ。国民の不安払拭(ふっしょく)にもつながるのではないか。

 「トラベル」とリスクとの相関関係を示すデータも、先日まとまった。利用した人の方に、しなかった人より多く感染を疑わせる症状が出た―。そんな調査結果を東京大などの研究チームが公表した。嗅覚や味覚の異常を訴えた人の割合も2倍ほど差があり、利用者ほど感染リスクは高いという。

 「Go To イート」を含めた会食も、リスクが高まっているようだ。広島市による7月以降の感染経路の分析では、11月は「会食」が急増した。判明した経路の3分の1を占め、家庭内や、接待を伴う飲食店での感染を大きく上回っていた。

 国民の命や健康を守るため、GoTo停止は避けられない。しかし政府はこの期に及んでも経済再生を重視して、来年6月末までの「トラベル」延長を決めた。分科会として諮問は受けていない、と尾身会長は明かしている。専門家の意見や、医療現場の悲鳴にも耳を貸さぬ政府の姿勢は到底許されない。

 医療現場に加え、打撃を受けている飲食店や観光業界などへの支援を惜しんではなるまい。GoTo事業を停止し、その費用を回すべきだ。それでも足りないようなら、使い残した数兆円もの予備費を充てればよい。

 政府の対応には国民も疑問を持ち始めている。最新の共同通信の世論調査では、経済活動より感染防止を優先すべきだとの答えが8割近くに達した。「トラベル」を全国一律に一時停止すべきだも、5割近かった。

 この先、気温や湿度が低くなれば、ウイルスが広がりやすくなる。政府が実効性ある対策を迅速に講じなければ、国民の不安は募るばかりだ。 

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