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農水族にカネ 政策ゆがんでいないか

2020/12/13 6:02

 金権政治の病根はどこまで、はびこっているのだろう。

 福山市の鶏卵生産大手「アキタフーズ」グループの元代表から、自民党の吉川貴盛衆院議員が農林水産相在任中に現金計500万円を受け取った疑惑に続き、やはり元農相で内閣官房参与だった西川公也氏も数百万円を受領した疑いが浮上した。

 あろうことか吉川氏は、現金の一部を大臣室でも受け取っていたという。西川氏は3年前の衆院選で落選後、アキタ社の顧問に就き、同社所有のクルーザーで接待を受けていたことも明らかになっている。

 政治家なら当然わきまえるべき、倫理という一線はどこに行ってしまったのか。

 両氏は、農水省に影響力を持つ族議員である。今回の疑惑は、とりわけ政権の要職にあった時期と重なる。西川氏は3年前まで環太平洋連携協定(TPP)の調整役もしていた。

 一方の元代表は、半世紀以上にわたってアキタ社の社長を務め、日本養鶏協会の重鎮だった。その現金提供や接待は、何か便宜の見返りなのか。農水省の施策をゆがめた節はないのか。吉川、西川両氏にとどまる問題か…。疑問が晴れぬ限り、政治不信は拭えない。

 吉川氏の疑惑は、贈収賄事件に発展する可能性も取り沙汰され、衆参両院の閉会中審査で野党も追及した。だが、「捜査活動に関わる」(野上浩太郎農相)などとして、農水省側は事実関係の説明を避けている。

 現金の趣旨や職務権限は判然としないものの、養鶏業界が働き掛けを強めていた案件は幾つか指摘されている。

 一つは、家畜を快適な環境で飼育する「アニマルウェルフェア(動物福祉)」の国際基準作りである。国内でおよそ9割を占めるとされるケージ飼育の見直しが迫られていた。業界は「日本の実情に合わない」と反発し、農水省を通じて要件緩和や義務化の見送りを求めた。もう一つは、鶏卵が値下がりした際に生産者の損失を穴埋めする事業の拡充だった。

 いずれも結果として、業界の意向に沿う中身となった。

 安価に栄養の取れる鶏卵は「物価の優等生」ともされ、消費者にはありがたい。とはいえ政策の決定過程に「政治とカネ」が絡んでいるとすれば、捨て置くわけにはいかない。

 吉川氏は、疑惑の発覚直後に入院した。西川氏は突如、非常勤の国家公務員である内閣官房参与を辞した。どちらも国民に向けては何ら語っておらず、説明責任を果たしていない。

 東京地検特捜部による疑惑の解明に、強く期待をかけたい。

 今回の端緒は、昨年の参院選広島選挙区を巡る河井克行元法相夫妻の買収事件である。事件の関係先であるアキタ社本社の家宅捜索によって、「闇」の一端が浮かび上がった。

 どれも、安倍晋三前首相の時代に起きている。統合型リゾート施設(IR)事業に絡む衆院議員秋元司被告(自民党を離党)の収賄・証人買収事件もある。何より前首相が、後援会の政治資金規正法違反疑惑で捜査線上に挙がっている。長期政権の緩みが引き起こした不祥事と言わざるを得ない。

 説明責任を果たした上で、責任も取る―。当たり前の政治が今ほど望まれるときはない。

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